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手に入れればいれるほど 何かが零れおちていく 愛せば愛すほど 誰かが誰かを憎んでく 世界が同じ座標にのることは きっとないのかもしれない だけど Isolde -イゾルデ- 私は差し出されたそれを見つめた。 装飾のされた紙・・・招待状のよう。 名前には「ジノ・ヴァインベルグ殿」と書かれている。 封筒の四すみには金の模様で装飾が施されており、美しい。 裏には赤い蝋で封がされていたらしく、それは半分に割れて、 元は一つのものであった名残だけを残していた。 中には一枚の手紙が入っていた。  内容は先日完成した第二帝国劇場で行われる最初の公演への招待状であった。 でも、腑に落ちないことがあった。 「・・どうして、ジノが招待されるの?」 「うーん・・よくわかんないけど・・見て・・ここ」 彼の指先の先には、手紙に書かれた文字の羅列が浮かんでいた。 『この第二帝国劇場で初めての公演を歌劇にし、作品を決めた時、 主賓に相応しいのは貴方に違いないと確信しました』 と、書かれていた。私はその意味がやはりよく理解できなかった。それと、もう一つ。 「どうして私にこれを見せるの?」 「アーニャに一緒に行って欲しいからさ」 「どうして?」 「こういうのは男女で見た方が見栄え的にも良いだろ?それに、この日はアーニャも休みで暇だし」 私は一瞬眉根を細めて呟いた。 「休みなのに」 「いいだろ!な、アーニャ!」 学園の女の子達を虜にする笑みが目の前に広がっていた。 私はジロリとその顔を睨んで渋々頷いた。  喜ぶジノの顔を見ながら、ほんの少しだけ期待したことを後悔した。 別にジノならば誘えば喜んでついていく女の子はたくさんいるだろう。 でも、もし普通の同級生なんかをその場に連れて行った場合本当に恋人と思われる可能性が高い。 私を連れていけば『同僚』であるという付属品がついてくるため、 恋愛関係かと万が一聞かれても『同僚兼友達』として都合のいい言い訳ができるわけである。 彼はこのなんとも言えない距離感を利用している。そして、私も。 「にしても、何が上演されるんだろうな。普通は書いてるものだろう」 ティーカップからアールグレイが唇に流れてく。 上下運動を行う喉仏。 私は、それをちらりと見つめて、携帯へと視線を下ろした。 データフォルダを整理しながら、 ドレスを注文しなくちゃという言葉が大脳で右から左へ流れた。  その時、ラウンズ専用の休憩室の扉が開いた。 靡いた金髪と赤いリボンは一人を特定していた。 「あら」 「やぁ、モニカ」 「ええ。二人とも任務上がり?」 「俺は書類地獄。アーニャはさっき遠征から帰ってきた。モニカは?」 「私も部隊指揮の任務が終わって帰ってきたところ」 彼女がソファーに腰を下ろせば、専属のメイドが温かい紅茶の入ったティーカップを持ってきた。 彼女は『ありがとう』と声をかけて、それに口をつけた。 「ねぇ、ジノ。それは何かしら?ラブレター?」 冗談半分に彼女は笑いながら封筒をさした。 「まさか。歌劇の招待状さ。モニカは詳しいんだっけ?」 「それなりに」 笑みを浮かべながら、彼女は話を続けた。 「アーニャと行くのね」 「ああ」 「何を見るの?」 「それが書いてないんだ」 「・・・え?ちょっと見てもいいかしら?」 「いいよ、はい」 モニカは招待状を読むと、また微笑んだ。悪戯っぽい笑みで。 「ジノにぴったりってことは駄目な色男の話ね。そんな話あったかしら・・・」 「えええ!?ちょっと、モニカー・・そりゃ酷いよ」 「あら、私、間違ったことなんて言ってないわよ。ねぇ、アーニャ?」 突然話を振られた私は視線をそちらに向けて、一つ首を縦に振った。 「アーニャぁ」 「ふふ、アーニャも同じ意見みたいよ。まぁ、本当はそんな話じゃないけれど」 「え?モニカは何がやるか知ってるのか?」 「ええ。第二帝国劇場の最初の公演、私も見ようかなって思ってたから。 まさか、本当にジノを主賓に呼ぶなんて思わなかったけど。トリスタンだけに」 「あー!もうもったいぶらないで教えてくれよ!」 その時、私の視線の先にある携帯画面にはあるホームページが映っていた。 第二帝国劇場のホームページ。最初の公演のタイトルで、意味が分かった。