(多少の残酷表現あり。アーニャが狂ってます) 「つまらない」 彼女はそう言って、掴んでいたナイトメアの頭部を潰した。 cresy 捕えられた捕虜はわずか10人。 俺達の任務は部隊の殲滅。 非常にたやすい任務だった。 あとはこの捕虜を捕えて終わり。 そのはずだった。 そんな時、朱の機体から降り立つ少女。 捕虜はびくりと身体を震わせ、 信じられないように彼女を見た。 無理もない。 数十ものナイトメアがこの機体によって このパイロットによって破壊されたのだから。 (ちなみに俺は今日は援護ばかりだった) 彼女は近寄ってきて、 俺の腕をつっついた。 「ん?どうした?アーニャ」 「・・ジノ」 よしよし、と桃色の頭を撫でてやる。 アーニャは無邪気な瞳で俺を見た。 「つまらないの」 俺ははぁと一つ溜息をついた。 これは彼女の悪い癖だ。 「仕方ないだろ。俺達ラウンズに匹敵するパイロットなんてそうそういないよ。  ・・・いや、そんなにいても困るし」 「・・でも、つまんないの」 無邪気な瞳が俺を見つめる。 揺れる、揺れる、揺れる。 その瞳が 怖い 「ジノ」 「・・・ん?」 私ね、好きなこと、あるの 「なんだ?」 彼女はそう言うとふわりと笑って 地面を指さした。 そこには蟻の行列。 大きなカマキリの死骸をせっせと運んでいる。 「蟻か?」 「うん。蟻は・・自分より大きなものを運んで、食べる」 「ああ」 「蟻は弱い。でももしかしたら・・こういうふうにカマキリだって  弱い蟻に食べられてしまうかもしれない」 「だから」 彼女はそういうと蟻の行列の上に足を置いた。 彼女が足を上げれば潰れた蟻の死骸。 「蟻は殺さなきゃ」 「潰さなきゃ」 「ね?・・ジノ」 アーニャがふわりと笑った。 瞳は狂気に染まっている。 「蟻は・・殲滅、でしょ?」 彼女は嗤う。 嗤って嗤って 俺は・・動けなかった。 彼女に恐怖した。 彼女が今からしようとしたことに恐怖した。 「ひとつ」 潰れた蟻、悲鳴が一つ 「ふたーつ」 潰れた蟻、断末魔が二つ 「みっつ」 潰れた蟻、血柱が三つ 俺は振り向くことができない。 目の前の兵士達は後ろで何が起こってるかを直と見ている。 が、彼らの目も恐怖だ。 「いやだぁぁあああああ!!!!!あああああああああ!!!!!!」 「やめおおおおおおっ!!!!ああああ痛い痛い痛い!!!!があああああああああああああああああ」 銃声なんてしない。 彼女は手足を縛られた彼らに銃なんて使わない。 彼女が使うのは剣が一本。 「つまんないつまんないつまんない」 断末魔。 俺は何も言わずに振り返る。 真白の制服が深紅染まっていた。 頸動脈から血柱。 腕がない男。 脳漿が零れた男。 失禁しながら額から血を拭く男。 嗤う嗤う少女。 彼女が作るのは蟻の死体。 「とお」 嗤う彼女が殲滅する。 もっとも残虐な遊びで。 「ジノ」 「・・・・・・・・・・・」 「楽しかったね」 嗤う。 男の血に塗れた身体で。 「・・・アーニャ・・・っ」 俺はそっと彼女を抱き締めた。 「・・ジノ?」 「・・・」 「どうして、悲しいの?」 「・・・アーニャが・・可哀想だから」 「・・・どうして?」 「・・・アーニャがたくさん死を見過ぎたから」 「ジノ・・・・」 彼女は俺の腕の中で 俺の胸に顔を埋めた。 そして、 顔を上げた。 楽しそうに笑った。 「ねぇ、ジノ」 「ん・・・」 「貴方も蟻?」 唇から血液が零れるのと同時に見えたのは 彼女の涙と腹に突き立つ剣だった。