(ちょっぴり微エロ) トクベツになりたいなんて そんなのかんがえちゃいけないんだって しっているのに Butterfly 彼は私の事を好きだと言った。 そう言って口付けた。 私は彼の事をすきだ・・と思う。 今まで人を好きになったことがないからよくわからないけれど。 きっと初めて感じたこの気持ちは恋なんだとおもう。 あるきっかけで想いを告げられた。 最初は嘘だと思った。 女たらしの彼が私なんか見るはずがない。 でも・・あの蒼い真剣な目の前で見つめられて、 気づいたら・・頷いていた。 だからどうしたというわけではない。 彼の態度が特に変わったというわけでもない。 待機室で私を膝においてはスザクと話す。 たまに休みが重なれば、二人でどこかへ行く。 それくらい。 たまにやんわりと手を繋がれて、 本当に時々部屋で・・キスをする。 それだけ それだけでいいのに それだけでいいっておもっていたのに ああ、私は抱く価値もない女なんだな、って 当たり前だ。 元々彼はそういう事に関しては早かった。 過去に女だっていたのは知っているはずだ。 いつかその首筋に紅い印があったのを私は知っている。 そんな彼が私なんかを抱くはずがないのだ。 こんな少しだけ膨らみを持った胸。 柔らかくない・・細い体。 子供のカラダ。 ましてや未経験の女。 めんどうだろう。 だから、それでもいいと思った。 心だけでも私が掴めたらいい。 そう思わざる得なかったのかもしれない。 体は誰か他の綺麗な大人の女の人のものでも 心は・・私だけのものだったらいい。 そう割り切っていたはずなのに。 「アーニャ」 「・・何」 「ジノ知らない?」 「知らない」 夕食を終えて、部屋でくつろいでいるところをスザクがやってきた。 ジノは仕事が終わった直後から姿が見えなかった。 きっとふらりと遊びにでも行ったんだろう。 どのような遊びかは想像したくもないが。 「・・緊急?」 「いや、別に急いでないからいいけど」 「ふぅん・・」 「ジノがどこ行ったか知ってるのかなって思って」 「・・・遊びに行った・・と思う」 「こんな時間から?全くジノも何やって・・」 「・・こんな時間からする遊び」 「・・へ?」 「わからない・・?」 くるりと視線を携帯からスザクに向けると彼は・・ 「わかった。賭博とか!」 「違う」 「じゃあ、飲酒」 「買ってる、女の人を、多分」 「へぇ、女を・・・ってえぇぇえ・・?」 スザクが少し赤くなるのと同時に 私は興味なさげに視線を携帯に戻した。 「え・・アーニャ、君たち・・・そのさ」 「・・付き合ってる?」 「じゃなかったのかい?」 「・・多分」 「って・・それ・・浮気だろ?」 「・・・別に」 「別にって・・・」 「・・・男の人ってそういうものじゃないの?」 「・・・へ?」 ベッドで寝返りを打ちながら、携帯からは視線を逸らさない。 「・・アーニャ、どういうことだい、それ?」 怪訝な顔でスザクは近寄ってきた。 「別に」 「・・・?」 「こんな凸凹の欠片もない体、興味ないと思うだけ」 「・・アーニャ、それは」 「別に慰めてほしいんじゃない」 「そうじゃなくてアーニャ」 「スザクは」 ぽつりと呟いた。 「女の人、抱いた事あるの?」 「えぇ!!?」 「・・・・」 視線だけを彼に向ける。 彼は戸惑ったようにベッドに腰かけた。 そして、俯いた。 「・・・あるよ」 「・・・そう」 「でも、それは」 「彼女の体とかじゃなくて、愛してたからね」 スザクはそう言って、照れながら私の頭をくしゃりと撫でた。 「アーニャは・・まだそういう経験は・・ないよね」 なんだか恥ずかしくなって、視線をそらしながらも 素直にこくりと頷いた。 「ジノはね、多分・・我慢してるんだよ」 「・・・・我慢・・?」 「アーニャが大切なんだよ、本当に」 「・・・」 「愛しくて愛しくて、愛してるからこそ怖いんだよ」 「・・・・」 「痛い思いもさせたくないしね」 「・・・・どうしてそう思うの?」 「・・・僕がそうだったから」 「・・・そうなの?」 「大切だからこそ、怖いんだよ。  ・・・っていうか、なんでアーニャ、  ジノがそういう遊びしてるって思ったの・・?」 「・・・見たから」 「遊びにいくところ?」 首を振った。 「ジノに・・すきって言われる前に」 「・・・・」 「ジノの首に紅い・・跡があった・・」 「・・・そっか。  でも今もそういうことしてるなんて限らないよ」 「・・・どうでもよかった・・の・・最初は」 気づけば頬を涙が伝っていた。 「・・・アーニャ」 携帯を置いて、涙をぬぐいながら、スザクの隣に座る。 でも・・全然止まってくれない。 心がなんだがごろごろする。 「そういうものだって、男の人って・・思って」 「でも」 「ジノにすきって言われてから」 「ずっと目でジノの事追ってる」 「ジノに触られるだけで・・どきどきする」 「ジノの事ばっかり考えてる」 「ざわざわするの・・胸が」 「そういうものだからって割り切ったのに」 「どうしたらいい・・・?スザク」 泣き続けて見つめる私を スザクは優しく微笑んで抱きしめてくれた。 なんだかその胸は大きく感じて、 私は暫くそこで泣いていた。 「アーニャ」 ゆっくり顔を上げる。 「君は魅力的だと思うよ」 「・・・別に慰めてもらわなくていい」 「いや本当に」 スザクはゆっくり私の髪に触れた。 「・・成長はさ、人それぞれだけど」 「君には・・・君にしかない魅力があるよ」 「だから・・そんなコンプレックス持たなくていいんだよ」 「・・・・そう・・?」 「うん、アーニャは可愛いから」 「・・子供っぽいってこと・・?」 「なんか子供っぽさの中にもちゃんと色気あるしね」 「・・・そう。・・・そんな目で見てたの」 「え・・フォローしたのに・・・」 涙はもう止まっていた。 なんだか、泣いたら少しすっきりした。 「腫れちゃったね」 「・・・大丈夫」 「ちゃんと冷やすんだよ」 こくりと頷いたと同時に 派手にドアが開いた。 「見て―――!!!アーニャ!!!!  あの凄く美味いプリンの店、4時間並んでやっと買えた!!!!!  って・・・え・・アーニャ?」 どっちも固まった。 先に口を開いたのはジノだった。 「・・・スザク」 「・・・何?」 「アーニャ・・・泣かせた?」 眉間に皺が寄ってるジノは珍しい。 というか怒っている。 そして・・スザクは溜息をついた。 「ねぇ、ジノ」 「・・・なんだよ」 「自分の胸に手を当ててよーく考えたら?」 「・・どういうことだよ」 「じゃあ、アーニャ。僕、部屋に戻るね」 「・・・ありがと・・・・スザク」 「おやすみ」 「・・おやすみ」 スザクはポンとジノの肩に手を置いて、 彼の耳元で何かを言った後、 彼の手元の箱からプリンを取って戻っていった。 やはりジノはスザクの分も買ってきたようだ。 ・・・なんだかジノの顔が赤い。 「アーニャ」 「・・・プリン買ってたの」 「・・ああ」 「・・ありがと・・・食べる・・・?」 「いや、後で」 「じゃ・・冷蔵庫入れる」 ジノから箱を受け取って、 それを冷蔵庫に入れた。 ジノは私のベッドに腰かけている。 私はその隣に座る。 いや座ろうとした。 その大きな手に掴まれて、腕の中に閉じ込められるまで。 ジノのいいにおいがする。 香水のにおいと男の人のにおいが混じってる。 肌が触れ合っている腕とか 体温が直に触れ合っているところが特に熱い。 心臓がばくばく言ってる。 顔に血が上る。 こんな私見られたくない。 だからその胸に顔を埋めた。 「アーニャ」 「何」 「・・・もう抱いてないから」 「・・・」 「お前に好きって言ってから」 「アーニャ以外の女に興味ないから」 私の首筋に埋まっていた彼の顔が まっすぐ顔の前に来て、見つめられる。 蒼い蒼い蒼い瞳。吸い込まれそうな空の色。 優しく後頭部に手を添えられた。 彼の顔が少し傾かれる。 少し近づいたのを見て、 視界を閉じていく。 やんわりと触れる感触、くちびるに あついあついあつい とけそうもえつきそうなみだがでそう 侵食されていく口内。 息苦しさと愛しさと。 やっぱりこの人が好きなんだと思ってしまう。 ぎゅっと彼の服を握ると 体を抱く腕が強まった。 どれだけすきときかれてもわからない だけどかくじつにあいしてるのだとおもうのだ 息苦しさが酷くなったころ、ゆっくりと唇が離れた。 唾液が糸をひいて、いやらしい。 ぽろりと不意に涙が零れた。 「なぁ・・アーニャ」 息苦しくて返事が出来ないかわりに涙が零れた瞳で 彼を見上げた。 顔がまた近づいてきてキスされるかと思ったが、 額をくっつけられただけ。 蒼に侵食される紅 「プリンさ・・賞味期限明日なの」 「・・・?」 「明日の朝、二人で食べよ」 「・・?・・いいけど・・」 「・・・そのかわりさ」 「アーニャ・・・食べていい?」 意味が分かって思わず頬が朱色に染まるのを止められなくて。 俯いたまま、こっくり頷いたと同時に ベッドに優しく押し倒された。 蒼に見つめられて 大きな腕から紅い蝶が羽ばたいていった。