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世界がどれだけ進歩したって

きっと消えないものがいっぱいあるから。



















































Happy Birthday!



















































目を擦りながら、階段を降りる。

どうやらあたしは部屋で転寝をしていたらしい。

リビングを見回すと誰もいない。

兄は先月ずっと付き合っていた彼女のところへ婿養子にいって

今は二人で花屋をやっている。

だから、いないのは当たり前なんだけれど。



「おかーさんー?おとーさん?」



全くあのバカップル夫婦はいい歳をして、

休日にまたラブラブでショッピングですか。

はぁ・・・。



あたしは、冷蔵庫を開けてオレンジジュースを取りだす。



「あ、お母さん、サンドイッチ作ってる」


きっと昼寝して、ご飯を逃したあたし用。

サーモンのサンドイッチを一つとって、

口に入れる。

お母さんのサーモンマリネのサンドイッチは

昔から大好き。



むしゃむしゃと口を動かしながら

リビングへ向かう。



誰もいないリビングはなんだか静かで

不思議な感じがする。

昔はもっともっとガヤガヤしてたのに

気づいたら何故かこんなに静かになってた。

お兄ちゃんが結婚したからかなぁ・・・。




そんなことを思いながら、

視線をテーブルに向けた。





「んー?何これ」





テーブルの上に置きっぱなしにされたケース。




「『我が家の思い出シリーズ☆第二弾』・・・」




丁寧に書かれているのに

書いてある言葉と不器用な星のせいで

すぐに父が書いたのだと気づく。







ケースを開けば、DVDディスクが一枚入っていた。





「・・今時DVD?古・・っ!」




あたしは一人で笑いながら、

何気なく、それをプレイヤーに入れた。

そして画面をつける。




再生ボタンを押した。













画面は最初はずっと砂嵐で

暫くすると映って。



「ん?ぶれてる?」



ガタガタと揺れる画面から

どうも撮った人の腕がないらしい。




『ビュンシェ!ちゃんと持ってくれよ』

『持ってるってば!父さんこそ、こっち押さないでよ!』





「え、お兄ちゃん!?若いなぁ・・!いつのだろ・・・?」




まだ声変わりもしていないような声だ。

あたしが生まれる前?もしくは生まれた直後かな。

どうやらこれをとったのは、幼い兄のようだ。




『ほら、こっち向いてよ』

『はい!ピース』

『違うよ、父さんじゃないってば!

 母さんに決まってるだろ』

『・・ビュンシェ、最近父さんに厳しいなぁ』




ブーブー文句をいう父を余所に

兄は母を映した。




母はパジャマ姿で病院のベッドに座っていた。

その胸には小さな赤ん坊が抱かれていた。








あ・・・・・、このビデオ・・・。










『はーい、僕の妹だよ』



そう言ってアップにされたのは

皺くちゃな赤ん坊。

目も開いていないから、きっと生まれてすぐなんだろう。




『初めまして』




兄が言えば、赤ん坊は小さく欠伸をした。

皆の笑い声が聞こえた。


『お兄ちゃんの挨拶に欠伸で答えるなんて、

 これは大物になるな!』

『ジノ以上に態度がでっかくならないで欲しいけど』

『え、アーニャ。それってどういう意味』

『そういう意味。あと病院では静かに』

『・・・はい』





赤ん坊は次は父の腕の中に収まった。





『初めまして、お父さんだよ』




そう言って父は赤ん坊の手に

人差し指を寄せた。

赤ん坊はそれをきゅっと握りしめた。




『・・・可愛いなぁ・・』




そう呟いて、幸せそうな目で見つめる父の姿に

あたしはなんとも言えなくなった。

いつも、ムードメーカーで、

優しくて、元気で、明るい父から

ふと漏れるその表情に


なんだか少しだけ、泣きたくなった。





『さてと、アーニャ!』

『何?』

『この子の名前だけどさ・・俺やっぱり・・』

『駄目、ビュンシェが決めたあの名前にするって言った』

『・・ビュンシェの時はスザクで、

 この子の時はビュンシェ・・!
 
 少しは父親の俺にも決めさせてくれよぉ・・・!』

『ジノは広場の鳩に名前つけてたからいいでしょ』

『広場の鳩と自分の子供を一緒にしないでくれよー!

 アーニャぁー』





そう言って、また、笑う。

笑う、笑う、笑う。

ああ、ここには、こんなにいっぱい、あったんだ。










『この子の名前は、』










そう、




あたしの、名前は、












ブツッ。












「え!?消えた!なんで!?」












暫くすると、もう一度再生された。





『ビュンシェ!落とすなってー』

『だから父さんがこっち押すからだって』

『仕方ないだろ!病室狭いんだから!』

『もー、父さんのせいでいいところ取れなかっただろ!

 母さん、もう一回!テイク2で!』





お母さんは、また、いつもの笑顔で笑って。

恥ずかしげに、口を開く。







『私の娘である、この子の名前は』






































「たっだいまー!」











お父さんのバカ声が玄関から響いた。

あたしは急いで、プレイヤーを消した。




「あら、起きてたの?サンドイッチ食べた?」

「うん」



荷物を一度置いて、

母はあたしに聞いてきた。








思い切って、言ってみる事にした。







「ねぇ、お父さん、お母さん」


「ん?」

「え、何?」




































「・・ありがと、ね」


















































何故かお父さんはぷっと噴きだした。


「何言ってるんだよ、その言葉は

 俺達が先に言わなきゃ意味ないじゃないか」

「え?・・どういうこと・・?」




「だーからー」




お父さんの掌が頭に乗った。



















































「お誕生日、おめでとう」



















































「あ」


そうだ、今日はあたしの誕生日だ。



「今日は、いっぱい好きなもの作るから」



お母さんは笑ってる。



「あとでビュンシェもあの子と一緒に来るからさ」

「え!お兄ちゃん達くるんだ」

「・・こないだ言ったでしょ、忘れっぽいんだから」





きっと、兄は、前からおねだりしていたネックレスを

プレゼントしてくれるに違いない。

それと毎年くれる、あれを。



















































色とりどりのコスモスの花束を。



















































拝啓、あたしを見てる誰か。




世界には辛いことがいっぱいあって

世界はどんどん新しくなって

古いことが、過去の事が

忘れ去られているけれど、


でも、きっとね、大切なことをずっとずっと覚えてられる気がするよ。









星が輝く宇宙のように、

綺麗な飾りのように、

踏まれてもくじけても真っ直ぐに天を仰ぐ、

愛情の花言葉を持つ、花の名前を持ってるあたしは



































今日も愛をいっぱい受けて育ってる。

真っ直ぐ真っ直ぐ。

そして、いつか、きっと、



















































誰かのために、輝いて、愛を注いでいくね。



















































いつもいいつもいつまでも

愛してくれて 有難う