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それを捧ぐもの、それを捧がれたもの Dear White and Black 白黒のキャンパス。 私はそっと指先を添えた。 力を込めれば切ない和音。 開かれた漆黒の板の中からは ピアニッシモで綴られる 切ないメロディー。 ぼんやりと彼のことを考えながら 弾く。 早いパッセージは まるで過ぎ去った時を示して。 そう三人で笑った日々を。 それが短調に変われば変わるほど 戦いが頭をよぎった。 二回目のモチーフを引き出せば 自然と涙が溢れてきた。 どうしてか分からない。 どうしてか分からない。 本当は分かっているのだけれど。 照明の灯らない薄暗い部屋で。 もう誰もいない旧ブリタニア政庁の 騎士の間。 もう、誰もいない、部屋。 寂しげに残されたグランドピアノ。 よくモニカが弾いていた。 弾き終わった後に、パンパンと三回小さな拍手。 私はその主を見る前に目をこすった。 「エチュード・・・。誰のために弾いたんだ?」 「・・・・・・・分かってるくせに」 「・・・ラウンズの死んでいった皆か?」 「・・・・・・・・違う」 「・・・」 「ただ、白の騎士に『別れ』を」 そう呟けば、涙がもう一度溢れだした。 そっと背中を抱きしめられた。 私はただ顔を手で覆った。 「・・・ちゃんと、弾けてたよ」 「・・・うん」 「きっとアイツも喜んでるよ」 「・・・・・・・・」 「・・・でももう一人・・弔ってやった方がいいやつが  いるだろ?」 「・・・・・・・・・・?」 「まぁ・・黒の皇子様はきっと別れなんて似合わないから。  もっと派手なやつだな」 交代と言われて 私は席をジノに譲った。 彼の後ろに立つ。 ジノはそっと指を添えた。 強烈な和音と 下り降りる早いパッセージと 大きなジノの手がくるくる回ってる。 でも紡がれる音はひたすらに短調で。 乱暴なような早い暗い音符の粒が まるで彼の早すぎる人生を表しているみたいだった。 悲しくて、暗くて、切ない人生を。 最後に近づくにつれて 訪れた長調。 でもそれはすぐに短調に変わって、 私は彼が死を迎えた瞬間を思い出した。 最後の早いパッセージと終了を告げる和音が あの日自らの血を浴びて 玉座から鎖に繋がれた彼の妹の元に 崩れ落ちた彼を連想させた。 「・・・・名前のまま」 「はは・・・・でもルルーシュに相応しい曲だろ」 「・・・・・・・悲しいくらい」 「・・・・・ああ」 私は弾き終わった彼の隣に座った。 小さなピアノ椅子は二人が座ると密着する状態になる。 「・・・ねぇ」 「ん・・・」 「結局・・この戦いで幸せになった人は誰?」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「それは、騎士団の人?私達?  日本の国民?・・・それとも」 「・・・・それとも?」 「・・・・・ルルーシュ?」 「・・・幸せの基準なんて人それぞれだから  俺には何も言えないよ」 「・・そう」 「ああ」 私はそっと彼の肩にもたれた。 彼は私の肩を抱いた。 「・・・切ない」 「・・・そうだな」 「・・・・・帰ろう」 「・・そうだな。もう俺達の私物も取ったし」 深紅の布を黒と白の上に引いた。 まるで二人の運命みたいだった。 深紅に覆われた二人の。 そして漆黒の蓋をしめた。 ジノが部屋を出て、 私も部屋を出ようとした。 振り返る。 誰もいない、薄暗い部屋。 「さよなら、枢木スザク・・・。  そして、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」 世界は孤独な二人を忘れない。