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(発刊予定の36個人誌と微妙にリンクしてます) あなたなんてだいきらいなのに My detestable things それは自室で本を読んでいる時だった。 来訪者を告げるベル。 部屋の前のカメラの画像を見れば、嫌悪感が軽く募る。 仕方なく、溜息をついてドアへ向かう。 スリッパのぱかぱか音でさえ軽快どころか重苦しい音に聞こえてくる。 スイッチを押せば開くドア。 「・・・何の用ですか、ブラッドリー卿」 「サインが欲しいんだが、クルシェフスキー卿」 差し出される書類。見れば、先日の前線での戦闘行為における報告書。 参加したラウンズは私と彼。 目の前の吸血鬼は相変わらず苛々する。 けれど仕事と割り切って。 「・・わかりました。すぐ書いて届けに行きます」 「いや、今書いてくれないか。至急なんだ」 「・・・わかりました。すぐ書きますんで、どうぞ」 この男を部屋に入れるなんて、すごく不快だったが 仕事だと自分に言い聞かせた。 彼にソファーで待っていてくれと言って、 書斎に万年筆を取りに行く。 彼に指定された場所にサインをする。 モニカ・クルシェフスキー、と。 ナイトオブトゥエルブ。 円卓十二位の騎士。 サインをした書類を持って、部屋へ戻れば 彼はソファーに座って、手持ちのナイフの一つを くるくる回していた。 「私の私室でそのような物騒なもの出さないでください」 「・・おや、これはすまない。クルシェフスキー卿」 彼は口元だけ笑って、それをしまった。 私は彼のその書類を渡した。 「どうぞ」 「ああ、どうも」 けれど、彼は一向に帰る気配を見せない。 「それ、至急じゃないんですか?」 「ああ」 「じゃあどうして・・」 「アンタの部屋がどんなものか興味あったから」 「随分悪趣味ですね、知ってましたけど」 「酷い言われようだ」 私は彼に嵌められた事に完全に頭にきて 同時に呆れて。 彼の目の前のソファーに腰を下ろした。 はぁとため息をついて、そして、瞑った目を開けた。 「出て行ってください」 「嫌だと言えば?」 「・・不法侵入で誰か連れてきて、出してもらう」 「それは困るが・・そうだな、コーヒーでも飲んだら帰る」 「・・・どうしてそんなこと・・」 「出て行って欲しいんだろ?」 私は心底嫌な顔でキッチンへ行って、 先程淹れたばかりのコーヒーをカップに注いだ。 まさか嫌いな男にコーヒーをいれるだなんて。 ありえない、今日は厄日ね。 コーヒーの入ったカップとソーサーを彼の目の前に置く。 「どうぞ」 声にも怒りが滲み出ている。 「どうも」 彼はそう言って、カップの取っ手に手を伸ばす。 私から視線を逸らさずに。 その意味深に浮かべた口元の笑み・・・苛々する。 だが、その瞬間起こった事に私は更に眉根を寄せる。 「・・・これはどういうこと?」 「さぁ」 カップの取っ手を握ろうとしていた彼の手は 私の手首を握っている。 「離して、ブラッドリー卿」 「いやだと言えば?」 トレイでそのまま彼の横っ面を殴ろうとしたが、 それを止められて。 トレイがぽんと投げられる。 両手首を掴まれた。 「離して」 「クルシェフスキー卿」 「・・離してって言ってるのわからないの?」 「アンタ、思った以上にお子様なんだな」 「・・・え・・?」 「あれ」 彼は視線だけ、私が読んでいた本にむける。 私はキッと彼を睨みつける。 「残念な事に、私の周りにはろくでもない男が多くて」 「俺みたいに?」 「・・わかってるなら、早く手を離して」 「なぁ、アンタさ、男と寝たことは?」 「は?」 思ってもない質問に頬が染まっていく。 「ああ、こたえなくていい。  反応見るだけでないってわかるから」 「・・悪かったわね・・第一、女性にそんな質問するなんて  紳士じゃないわ」 「ああ、俺は基本紳士じゃないからな」 「きゃっ・・・」 ふいに彼が私の体を押す。 私は自動的にソファーに座りこむ形になる。 そして、そのまま彼が私に覆いかぶさる。 彼の顔が至近距離にきて、何をされるのか 不安になる。 「なに?」 「なら、キスくらいはあるか?」 「・・なんでそんなこと貴方に・・」 「へぇ・・?色恋沙汰には疎いようで、クルシェフスキー卿。  小説の中には好みの男性はいらっしゃいましたか?」 「馬鹿にするのも大概にして」 「・・それなら面白い話をしようか、クルシェフスキー卿」 「・・は?」 「あんたに惚れてるって言ったら、それは笑い話くらいにはなる?」 次の瞬間目を見開いた。 信じられない言葉と同時に私の口が塞がった。 大嫌いな男の瞳の閉じられた顔が見える。 これ以上それを見ると頭がおかしくなりそうで、 瞳を閉じた。 息苦しくなって、ふと唇を開ければ、 そこから侵入する未知の感覚。 吸血鬼の舌は私のを絡め取って口内を蹂躙していく。 もしかしたら血を吸われてるのかもしれないとぼんやりした意識で考える。 抵抗しようにも、腕は拘束されてるし。 第一、ファーストキスを大嫌いな男に奪われたショックで もう何も考えたくない。 ・・・・ということにしたい。 何故かわからない。嫌悪感が少ないことを。 きっとそれは一瞬見えた彼の顔だ。 いつもの不敵そうな顔でキスしたらいいのに。 ねぇどうしてそんな苦しそうな顔で私に口付けるの。 いやならやめればいいじゃない。 訳が分からない。 どうせ私がすきっていうのも この行為も 未経験の私にたいするただの嫌がらせのくせに。 私をからかっているだけなんでしょう、どうせ。 どうせ。 一瞬唇が離れて、彼が私を見つめた。 私は息苦しくて、浅い息をして、彼を見ている。 そのままもう一度口付けられる。 もう思考がぽろぽろ零れおちていく。 彼のごつごつした指が私の頭を抱いている。 指先が髪を絡めた瞬間とくりと胸を打つ。 同時に涙がこぼれた。 また唇が離れて、見つめられる。 私は静かに涙を一筋溢して。 「や・・めて・・・ルキ・・・アーノ」 小さくそう呟いた。 彼の名を読んだのは初めてで。 でもなぜかそう呼ばないといけないと感じた。 彼はあの苦しそうな顔で私を見つめた。 彼は親指で私の涙を拭って、 けれどもう一度彼の顔が近付いてくる。 あと数センチというところで 部屋のベルが鳴った。 彼はそのまま、固まって。 そして、私の上から退いて、 書類を掴む。 何も言わずに壁を一瞬殴って、出ていった。 私は俯いてソファーに座ったまま、唇に触れた。 まだ温かかった。 違う体温の温かさを感じた。 それは大嫌いから始まる恋 (ああ、次に会う事はないとは知らなかった初恋)