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(S&Fの一年後。再びレッツ自己満!レッツパラレル!) ひとをすきになることはいけないことですか? amorous distance 彼のマンションの前。 いつも通り。 瞳を閉じれば、唇に温かい温度。 開ければ、もっと優しい笑顔。 「おやすみ」 「おやすみなさい」 優しく髪を撫ぜられて、 私はタクシーに乗り込んだ。 彼と付き合いだして、一年が経った。 早いな、って思う。 彼は高校3年の受験生になった。 私も実は中学3年になるけれど、 学校はほとんど行っていないが エスカレーター式の私立のため、高校へは自動的に行ける。 『勉強があるから来るのは控えた方がいい?』と聞けば 『そんなことされたら禁断症状が出て、もっと勉強できない』 と言われてしまった。 彼は意外と(こんな言い方したら失礼だけど)頭がいい。 教育学部に行って、小学校の先生になりたいらしい。 私は相変わらず歌手で。 彼と付き合いだしてから 歌うだけだったのが、歌詞も書くようになった。 最初に書いた歌詞が「SAF love」で、 発売開始後ランキングで二か月連続一位なんて 事があってびっくりした。 歌詞を書き始めてから、今まで以上にCDも売れるようになった。 ファンからは 「アーニャちゃんの歌詞はあったかい。共感を持てる」 そう言われるようになった。 嬉しかった。恋して、初めて、私は本当に恋の歌が歌えてるって思ったから。 そういえば・・彼はマンションに一人暮らし。 家族は?と恐る恐る聞けば、 「・・・実は・・」 と俯いた彼に・・私は 「・・・ごめん」 そう言って暗くなってしまった。 すると彼はくすくす笑って。 「嘘」 「へ・・?」 「兄が3人いるんだけどさ、皆上京してて。  だったら俺もこっちに来たいなって思って一人暮らししてるんだ。  両親も兄も全員ピンピンしてる」 「・・・も・・びっくりした・・」 「ごめんごめん・・」 彼の大きな掌が私の髪を撫ぜる。 この仕草がすき。だって温かい。 「アーニャは?」 「・・私・・?」 「お父さんと、お母さんは?」 「私は・・4年前に離婚して、今はお父さんと一緒に住んでる」 「え・・ごめん・・」 「・・別に・・いいの。その時に、歌手になりたいって思ったの」 「・・・そうなんだ」 「最初は・・お母さんが歌が好きだったの。  ・・・歌ってたら・・お母さんが帰ってきてくれるって・・どこかで思ってて。  ・・でも気づいたら歌う事の方が楽しくなって・・。  お父さんも離婚して以来仕事ばっかりで、ほとんど家にいなくて・・  それで家にいたくなくて・・オーディションを受けたの。  それで・・・・合格して・・・2年前の話・・かな」 「あ・・・ごめん。こんな話・・つまんない・・ね」 彼の表情を伺おうとすれば、すぐに抱きしめられる。 「え・・あ・・・ジノ・・?」 「・・寂しかった・・・?」 返答に困っていれば、彼の唇が落ちてきた。 額に、頬に、鼻先に、瞼に。 「・・も・・大丈夫・・くすぐったい・・ジノ・・」 「だって、アーニャが寂しそうな顔するから」 キスされるのは嫌じゃない。 でも恥ずかしい。 ぎゅっと彼の服の裾を掴めば、優しく見つめてくれる。 だから・・彼の前だと、嘘なんて言えないの。 全部全部言ってしまう。 「寂しかったよ」 「でも・・今は」 「寂しくないよ」 「ジノがいるから」 恥ずかしかったけど、そうやっていつもみたいに 可愛くない笑顔(彼は可愛いと言ってくれるけど)を見せれば、 もう一度きつく抱きしめられて、唇にキス。 ああ、寂しくなんてないよ。 今ね、すごく幸せ。 だから 誰にも 壊されたくないの この幸せ。 あの次の日だった。 朝起きて。 マネージャーに今すぐ事務所に来るように言われて。 行けば・・・机に叩きつけられた週刊誌。 「ねぇ、アーニャ。これは何かしら?」 所長のベアトリスは私をいつも以上に睨みつけた。 私はその週刊誌のページを見て、 完全に思考が止まった。息ができなくなった。 『アーニャ・アールストレイム、14歳の夜のお遊び!?』 と題されたページに大きく出ていたのは 私が帰り際に彼に頭を撫でられている写真。 その次は抱きしめられて、キスしている写真。 (彼の顔にはちゃんとモザイクがかけてあった。  そこだけは救いだったけど) 勝手な妄想が書き綴られている文面。 言っておくが、私は彼とは・・そういう関係を持ったことはないし、 彼もそれは分かってくれている・・。 私が・・・もう少し大きくなるまではキス以上はしないって。 「・・・・・・」 「アーニャ、こんなゴシップとられることがどういうことになるか分かってるの!!?」 バンと叩かれた机に私はビクリとした。 「・・・彼との・・関係は・・?」 「・・恋人です」 「・・・いつから・・・?」 「・・・一年前」 「・・・・・・・・別れなさい」 私は目を見開いた。 「・・どうして!?」 「貴方の将来のために必要なことなの!」 「私、ここに書かれてるような関係じゃない!  ここに書いてるのは嘘ばっかり」 「それでも!読んでる人は真実だと思うのよ!」 「・・・・でも・・」 「いいわね・・一ヶ月後のライブまで、猶予をあげるから。  それまでに別れるのよ。その方が相手の彼にもいいことなのよ。  貴方は歌手なの。もうただの女の子じゃないの!  よく反省しなさい!」 その言葉の後、部屋を出た。 その後はいつもどおりの仕事だったけれど、 週刊誌の記事の事をずっと聞かれた。 事務所の人言ったとおり 「言えません」で通した。 ブログにもいっぱいそのことでメッセージが来た。 「失望した」 「そんな子だと思わなかった」 ・・・大好きだったブログすら更新できなくなった。 彼女と会った次の日だった。 俺は昼休みにリヴァルに呼ばれた。 屋上に行けば、リヴァルはパンを食べながら ある雑誌を見せた。 俺も昼食を食べながらそれを見た。 思わずそのページに見入った。 咀嚼が止まる。 中のものをごくりと飲みこんで。 「・・なんだよ、・・これ」 そんなの言わなくたってわかってた。 昨日彼女が家に来て、その帰りの別れ際の写真。 『14歳の夜のお遊び!?』なんて 明らかに卑猥な行為を意味するようなタイトルや ありえないことばかり並べた文面。 嘘・嘘・嘘。嘘ばかりが書きならべられている。 「・・ジノ、これ・・やっぱり・・お前なのか?」 リヴァルが不安気に見てくる。 俺は溜息をついた。 でも、彼の事は信用しているし・・本当のことを話す事にした。 「・・俺だよ。アーニャと一年前から付き合ってる」 「え・・ええええええええ!!?ちょ、な、なんで言ってくれなかったんだよ!?」 「・・相手は歌手だし・・あまり大っぴらに広がったりするのが嫌だったから」 「道理で・・」 「・・・何が?」 「いやぁ・・一年前からジノって女遊びやめたじゃん。  あの女好きのジノが。夢中で仕方ない彼女でもできたのかなーって思ってたけど。  まさかあのアーニャちゃんとは・・。ていうかどうしたら付き合う事になるんだよ」 「ん・・・まぁそれは話せば長いというか・・」 「まぁ・・またそれは今度聞くとして!」 リヴァルは神妙な面持ちで俺を見た。 「・・やっちゃった?」 「・・・は?」 「・・・いや、ジノのことだからもう手は出してるでしょ」 「・・・いくら俺でも14歳の女の子に手はださない」 「え、じゃあ・・この記事は・・」 「嘘に決まってるだろ!?アーニャとはまだキスしかしてないって」 「でも・・アーニャちゃんにキスしたわけだ、ジノは・・」 「う・・・ま・・まぁ・・」 「ああああああ!なんて羨ましんだ!!ああ、神様は理不尽すぎる!  俺に彼女をください!俺に!」 「あーもー、リヴァル、うるさ・・・ん?あ、ごめん、電話だ」 「おー」 震える携帯(着うたは実はアーニャの曲だがバレると恥ずかしいので常にマナーにしてる) を掴むと画面は彼女の驚いた写真。 (着信用に振り向いた彼女の写真をとったら恥ずかしいと怒られた。まぁ設定しちゃったが) 通話ボタンを押す。 「もしもし?」 『・・・ジノ・・・?』 「アーニャ・・、泣いてる・・・?」 「え、アーニャちゃん!!?」 と数メートル先で地獄耳のリヴァルが唸ったが、 俺がジロリと睨めば何も言わなくなった。 「アーニャ?どうした?」 『・・ジノッ・・どうしたらいいの・・?』 「・・アーニャ・・」 『私・・っ・・ジノと・・変なこと・・してないのにっ・・。  なんで・・あんなこと・・書かれなきゃいけないの・・?』 「アーニャ・・」 『・・ごめんね・・・しばらく・・・あえない・・っ・・』 「・・分かってる・・。アーニャ・・電話は・・できるだろ?」 『う・・・ん・・でんわ・・する・・』 「待ってる・・・」 『・・きらいにならないで・・』 「なるわけないだろ・・・」 『・・だいすき・・』 「うん、俺もだいすきだよ」 『また・・でんわするね・・バイバイ・・』 「バイバイ」 わずか数秒の通話。 傍にいてやりたい。 傍にいって抱きしめてあげたい。 でもそれができない・・もどかしい。 ぎゅっと拳を握り締めれば。 「なーにーがー『うん、俺もだいすきだよ』だー。  骨抜きじゃないかー、ジノ」 「・・まだ聞いてたのか、リヴァル」 「聞いてましたとも!」 その後もずっとずっと気になって授業なんて集中できなかった。 アーニャの事が心配でたまらなかった。 家に帰ってニュースを見れば案の定彼女の事がネタになっていた。 皆好き勝手想像して。 アイツの何を知ってるんだ。 アーニャの寂しさとか アーニャの苦しみとか 何を知ってるんだ。 でも俺はただ部屋で佇んでることしかできなくて。 苛々してクッションをテレビに投げつけた。 それからずっと彼女には会えなかった。 1日、3日、1週間、2週間・・・そして3週間経った時、 リヴァルがあるチケットをくれた。 「一緒に見に行こう」 アーニャのライブのチケットだった。 しかも今までで一番規模が大きいライブ。 会場も大きい。なのに、席が前から2列目。 アーニャのライブはチケットですら即完売する。 それなのにこんなチケットどうやって・・・。 俺が信じられない目で見れば。 「しょんぼりしてる親友を見てるとこっちまで辛気臭くなるから。  そのかわりジノは一応帽子着用だから。  ・・だれかファンに気づかれたら問題だろ?」 久し振りに自称親友に感謝した。 (まぁ・・親友だけれど) ジノと会えなくなってもうすぐ一ヶ月 約束のライブは明日。 でも・・言えるわけなんてない。 別れるなんて・・できない。 歌手をやめようか。 そうも考えた。 そしたら誰も何も言わない。 それにファンの皆も悲しむ。 誰より、彼自身が悲しむと思った。 歌を捨てたら・・きっとジノは・・ そんな私を・・・今以上に好きにはなってくれないと思う。 彼が歌だけで私を見てるっていうわけじゃないのは知ってる。 でも私が彼と一緒にいるために大好きな歌を捨てれば 彼はきっと傷つくと思う・・。 でもジノと別れたくはない・・・。 だから 賭けに出ようって思った。 ライブは前よりも混んで、ずっと広い会場だった。 俺とリヴァルの席はよく見ることができた。 ブザーが鳴って、暗闇になる会場。 イントロだけが流れだし、そして爆発音と共に出てくるアーニャ。 観客の歓声に歌いながら答えていく。 やっぱり・・歌ってるアーニャが一番好きだ。 彼女はいつも以上に熱く歌っていた気がする。 客の盛り上がりも最高潮になる。 何曲も何曲も歌っていく。 大好きなアーニャの歌が 大好きなアーニャの声が 俺の鼓膜を震わせていく。 やがて、最後の曲になってしまう。 その前に灯りが消え、 彼女にスポットライトがあたる。 「今日はきてくれて有難う。  私も楽しかった。  でも最後の曲の前に聞いてほしいことがあります」 その言葉に客が静まり返った。 俺も彼女から視線を逸らさず、ずっと彼女を見つめていた。 彼女は意を決したようにマイクを握った。 「こないだ・・・雑誌に私の記事が書かれました。  テレビにも・・報道されて・・皆知ってると思う。  ・・・あんな写真を見て・・皆不快な思いをしたと思う。  ・・・ほんとうにごめんなさい」 アーニャは深くお辞儀をした。 桃色の髪の毛が重力に従って落ちた。 そして、彼女はゆっくり顔を上げて言った。 「・・・一緒に映ってた人は・・私の恋人・・・です」 その言葉にファンがざわつき出す。 今まで何も言わなかったアーニャがこのことについて話しだしたから。 スタッフも予想外のできごとなのか、慌てている。 「でも、聞いて!  私・・彼とは皆に後ろめたいこと、何もしてない!  ただ普通に彼が好きで、好きで、一緒にいたいだけ」 彼女の言葉に俺は息を飲んだ。 「一緒に笑って、一緒に遊んで、一緒にご飯食べて、  手を繋いで、抱き合って、キスして」 「それって・・だめかな?  いけない・・ことなの・・・かな・・・?」 ぽろぽろと涙が零れていくのが見えた。 「私は・・・初めて・・人を好きになって・・。  それで本当に恋の歌が歌えるようになったって思った・・。  自分で歌詞を書き始めたのも・・この気持ちを・・皆と一緒に感じれたらいいって思ったから」 「でも・・・それっていけない・・・?」 「・・わたしは・・・・彼を・・すきになっちゃいけない・・・ですか・・・?」 ぼろぼろと涙を流すアーニャ。 でも次の瞬間聞こえてくる声。 「アーニャちゃん、頑張って!!」 「頑張れー!!!!」 「俺達は信じてる!!!」 「ずっと応援してるぞー!!!!」 アーニャはその言葉に涙を拭いながら頷いた。 それでも涙が止まらないのかずっと 手で涙を覆い続けている。 嗚咽がマイク越しに聞こえてくる。 やがて応援が一つになって 「アーニャ、アーニャ、アーニャ!」 とアーニャコールに包まれた頃、彼女は泣き顔を上げて。 何かを言おうとした瞬間に。 その瞳が見開かれた。 その視線の先には 俺がいた。 「・・・うそ」 観客はアーニャコールを続けて。 その中に 「アーニャちゃん、がんばれー!」 「がんばれー!」 「アーニャちゃん、だいすきだー!」 と声が続く。 俺は笑って・・・・、息を吸った。 「アーニャ!愛してる!」 観客は感極まったファンの一人だと思ったみたいだった。 でも違う、彼女は。 彼女には伝わった。彼女は涙を拭って、あの笑みで強く頷いた。 「皆、有難う・・。  ・・皆のために・・私を応援してくれる皆のために    新曲『madly in love』、歌うね」 次の瞬間観客のテンションは最高調に達する。 バンドが演奏を始める。 アーニャがマイクを握った。 「皆だいすき!それから」 視線だけを俺に向けて 「私も、愛してる!」 彼女のライブの後、 彼女はブログに俺との恋愛をぼのぼのと綴るようになった。 ファンも俺達の事を応援してくれている人が多いらしい。 どうやらブログに書いてる内容から、 こないだの記事は本当に嘘ばっかりだと分かったらしい。 事務所の人はニューシングルの『amorous distance』の 『SAF love』以上のヒットのために、もう俺達の関係も何も言わなくなったそうだ。 ああそうそう。 自称親友のリヴァルだが、チケットのお礼を上げた。 「なんだよ、ジノ。突然家に来いって」 「まぁまぁ・・入れって」 靴を脱ごうとしたリヴァルは行動が停止した。 玄関に揃えられた靴。女物のヒール。 「・・来てるのか!?」 「・・会いたがってただろ・・チケットのお礼」 「嘘だろぉぉぉぉおおおおおお!!!?」 リヴァルが絶叫しながらリビングに入れば、 「え・・・あ・・・」 完全にビビってるアーニャ。 「・・ほ・・んもの・・だ・・」 「・・リヴァル、アーニャがビビってる」 「・・俺は震えてる・・・どうしよう・・本物のアーニャちゃんだ・・」 「え・・あ・・こ・・こんばんわ・・」 とりあえず挨拶したアーニャに、リヴァルは。 「お、俺リヴァル!!ふぁ、ファンなんだ!!サインとあ、握手して!!!」 「・・お前、噛み過ぎ」 リヴァルはアーニャにサインと握手をしてもらっていた。 実はアーニャにはリヴァルにあのライブのチケットを貰ったことを話していた。 それを聞けばアーニャも何かお礼がしたいと言ったので、 この出会いが実現したわけだが。 リヴァルは彼女と暫く話して、そして帰っていった。 彼は空気は読める。 「・・変な・・人・・でも・・いい人だった・・」 「・・そうだろ?・・大丈夫、アイツは俺達の事他言したりしないよ」 「うん・・」 ソファーに並んで座る。 ことりともたれてくるアーニャの腰を掴んだ。 「へ・・?」 「よいしょっと!」 「きゃ・・」 そのまま抱き上げて、膝に乗せる。 そして抱き締めた。 「・・ジノ・・・?」 「ね・・アーニャ、・・歌って・・?」 「・・・何がいい?」 「・・・・・子守唄」 そう言えばくすりと笑った。 ああ、確かに骨抜きだ。 この笑顔さえ見れればなんでもできる気がする。 「ジノが・・甘えるの・・珍しい・・」 「ホントはアーニャをリヴァルに会わせるの、ちょっと嫌だった」 「・・・・ジノ・・」 ぎゅっと小さな胸に顔を埋める。 アーニャの匂い。 俺だけのアーニャ。この瞬間だけは俺だけの。 細い・・マイクを握る指先が俺の髪をといでいる。 いつもは恋の歌が紡がれる唇が優しいメロディーを紡ぐ。 俺達のamorous distance それは0p