わたしのいちばんのばしょ hide and seek 「アーニャは私に冷たい!」 彼はいきなり拗ねた。 というのも、さっきから彼が 私に何かしら話しかけていたのだが 私はブログの更新に夢中で 生返事しか返してなかったから。 「アーニャは・・私が嫌いなのか・・?」 子犬のように目を潤ませて 私の膝に顔をのせる姿は 帝国の騎士ナイトオブラウンズの三番目の騎士とは 思えない。 私は一つ溜息をついて携帯をしまった。 「・・・分かった」 「へ・・?」 「遊んであげる」 「え!?」 「・・・かくれんぼ」 「・・・・・・?」 「一時間。  今五時前だから、六時までにジノが私を見つけられなかったら」 「見つけられなかったら・・・!?」 ジノは生唾をごくりと飲んで私を見つめた。 私は少しだけ口辺をあげて 「罰ゲーム」 「・・・わかった!」 「じゃあ・・・60秒数えて。  隠れる範囲はこの建物の中だけだから」 「よし!」 ジノはそう言って目を瞑って数え出した。 「ろくじゅーっ!」 数え終って、探しだす。 とりあえず、今いる部屋を一通り探した。 その後は部屋を出て スザクの部屋に行った。 「アーニャ?見てないけど・・・」 「あ、そうか・・・!ありがとな・・」 「ああ・・」 スザクの部屋を出た後は 俺の部屋に行って、 次にアーニャの部屋に行こうとした時に 携帯が鳴った。 画面にはアーニャの名前。 「ん、もしもし?」 『ジノ・・言い忘れてた』 「え?」 『誰かの部屋にはいないから。  私の部屋とか・・ジノの部屋とか』 「ああ・・なるほど」 『・・・あと・・ヒントあげる』 『私が一番すきなところにいるから』 「アーニャの一番すきなところ?」 『うん。じゃ』 「あ、おい」 ツーツーツーと電子音だけが響く。 「アーニャの好きな場所・・?」 俺は首を傾げながら思い当たるところを探し出した。 とりあえず、さっきまでいたラウンズの休憩室は もう探していたので、 モルドレッドの置いてある格納庫に行ってみた。 でもやっぱりアーニャはいなくて。 個人の部屋にいなくて・・・この建物内で アーニャが・・好きな場所・・・ 「あ」 そうだ、屋上庭園にまだ行ってない! 俺は急いでエレベータで屋上に上がった。 よくアーニャがアーサーと戯れている場所。 急いで屋上庭園の階段を駆けあがった。 「・・・あ・・・れ?」 でもやはりアーニャはいなかった。 きょろきょろ見渡したが やっぱりいない。 はっとして時計を見る。 気づけば、もう時間がない。 なぜなら今は六時五分前だから。 今から他の所なんていける時間はないし、 ここより他にアーニャの好きな場所なんて思いつかない。 「はぁ・・・」 諦めてアーニャがいつも座っているところに腰を下ろした。 「・・・俺って」 「アーニャのこと、全然知らないんだな」 よく考えればそうだった。 アーニャのことが大好きだけれど アーニャのことなんて本当は全然わかってなかったんじゃないかって 不安になった。 アーニャの好きな場所さえ知らない。 アーニャの好きな食べ物って何だろう。 アーニャの好きな言葉って? そう考えれば、不安になった。 この愛情はただの押し付けだったんじゃないかって 怖くなった。 本当に俺のことが鬱陶しいんじゃないかって 降参を告げようと携帯をとりだした。 短縮に登録されているアーニャの番号を押す。 プルプルプルプル 「え?」 アーニャの着信音が聞こえてきた。 ふと音が聞こえた方向を見れば アーニャが階段にすわって 携帯をあたふたしながら切ろうとしていた。 「アーニャ、見つけた!」 ぎゅっと後ろから抱きしめる。 アーニャは半ば不服そうに俺を見つめた。 「・・・こんなの、ずるい」 「はは・・・確かに」 「・・・・・・」 「やっぱりここがアーニャの大好きな場所だったんだな。  よくアーサーといるし・・・」 知らなかったアーニャのことを知れて嬉しかった。 アーニャに笑いかければ 彼女はやっぱり不服そうだった。 「違う」 「え・・?」 「ここ、好きな場所じゃない」 「・・・?でもアーニャここにいたじゃないか・・」 「違う・・私・・・最初からここにいたわけじゃない」 「・・・?」 「・・・私の好きな場所は・・・・・」 頬を少しだけ染めて 俺から視線を逸らして、 呟いた。 「ジノの・・・傍」 その可愛らしい答えに 俺の頬にも熱が伝動していく。 「え・・・じゃ・・・ずっと  俺の近くにいたってことか!?」 コクリと頷く仕草に 抱きしめる力を一層強めた。 「・・・私・・・も」 「え・・・」 「・・・あんまりジノの・・こと知らない」 「・・・・」 「・・・だから」 「教えて・・・ね・・・・?」 ぎゅうと恥ずかしそうに 俺の胸元に顔を押しつけて 俺の服の裾を掴むアーニャが 愛しくて。 「・・・うん」 これからいっぱいきみのことがしりたくなったんだ そのちいさなくちびるで “きみ”をいっぱいおしえてください