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その蒼い瞳を私に向かせたくて でも、そんなことは言えなくて The lip which is a liar 学校での昼休み。 お昼を食べて、 ふと廊下を歩いている時だった。 中庭を見下ろせばジノがいた。 たくさんの女の子に囲まれてる。 いつもみたいな光景。 彼がこんなふうに囲まれるのは学校だけじゃない。 政庁でだって、受付の女の人と気軽に話したりしてる。 彼は人に優しくて 誰にでも好かれて 顔だっていい 女の子には特に優しい だから人が特に女の子が彼の周りにやってくるのは 当たり前のことで だから胸がチクリと痛んだのはきっと気のせい その笑顔がふと上を向いて 視線が私を見つめて 手を振る 女の子の少し嫉妬した視線が私を貫いて 私は苛々した。 ふいと視線を逸らして走り去る。 ガラス越しだから彼の声は聞こえない。 知ってる。 ジノはほんとは私にはもったいないくらいの人で 私なんて女としては全然だめで ぺったんこの胸 可愛らしく笑えない顔 凹凸のないからだ 性格だってお世辞には可愛いとはいえない ほんとうは きっとそばにいれることだって ぐうぜんで ましてや、二人の関係は ・・・・・・・スザクしか知らないけど 恋人で ほんとうはそれってすごくきせきてきなことだとおもう でもわたしはぜいたくで どこかでかれをひとりじめしたいっておもってる でもわたしはかれといっしょにいたおんなのこたちとはちがって かわいくないから このきもちをすなおにつたえることなんてできないの・・・ 風を切って走った。 階段を駆け上って。 屋上の扉を開けて、深呼吸。 ドアを開いた瞬間にチャイムが鳴る。 たまには・・・いいか、授業をサボるのも・・・。 私はぺたりと座った。 ぽろぽろと零れ落ちた涙。 意味がわからない。 どうして涙が零れるの? この気持ちの名前は? ね、その蒼い瞳で その子達を見ないで ね、その蒼い瞳で私だけ見つめて 私の名前だけ呼んで 私だけに笑いかけて 私だけを抱きしめて 私だけに大好きって言って 私だけに愛してるって囁いて 私だけにキスして 私だけ わたしだけが あなたのそばにいれたらいいのに ずっとずっと 唇を噛みしめた。 馬鹿みたい。 なんでこんな醜い気持ちが溢れてくるんだろう。 なんで? どうして? こんな汚い思い、知らない。 全部ジノのせい。 全部全部ジノのせい。 私をこんなに汚くしたのはジノのせい。 私が彼のことだいすきだから 彼のせいでこんなにだいすきになってしまったから 彼のせいでこんな醜い気持ちを持つようになってしまったから 全部ジノのせい でも 零れた涙が地面を濡らす。 ぜんぶかれのせいにしてるじぶんがいちばんみにくいってしってるのに こころのおくでこのきもちをおしこめて かれになにもいうことができなくて ほんとうはこんなじぶんがだいきらいで 俯いて涙を拭いていたら 温かい陽の光が急に暗くなった。 空も私と一緒に涙するのだろうかと顔を上げれば、 陽の光を遮ったのは大きな背中。 驚いて、暫く目を見開いた後に 涙を隠すように拭って 「授業始まってる」 「知ってるよ」 またそんな会話。 言いたい言葉が全部自動変換されていくの。 すきといいたいのに ばかといってて あいしてるといわれて あいしてるといいたいのに しらないといってみたり この唇は本当に酷い嘘つきで 持ち主になんて従ってくれないの。 「どうして泣いてたの?」 「・・・・泣いてない」 「・・・嘘つくなって」 「泣いてない」 ほら、また。 この唇は嘘ばっかりついてるの。 ねぇ、嫌いになった? 私、嘘つきだから。 ねぇ、こんな醜い子は嫌い? こんな可愛くない私は嫌い? こんな素直になれない私は きらい? 「じゃあ、これはなんだ?」 そういって瞳から零れる雫を掬う温かい指先。 「雨」 「すっごい晴れてるんだけど」 「・・・知らない」 「ね、どうして泣いてるんだよ?」 「泣いてない」 同道巡りを繰り返して。 素直になれないのに。 あなたは こつりと何も言わずに額を私の額に合わす。 「ごめん」 「・・・・・」 「・・・寂しかった?」 「・・・・・・・・・・・・」 「アーニャ」 「・・・・・・・・」 「だいすき、あいしてる」 「・・・うそつき」 (わたしも) それは私の唇の事。 でも私の唇は嘘つきだから思ってることと反対しか言えない。 「・・・嘘なんてついてない」 「私は」 「あの子達みたいに可愛くない」 (ごめんなさい、だいすき) 「胸だってない、優しくなんてない」 (ずっとずっとそばにいて) 「素直になんてなれない」 (きらいにならないで!) 「どうして」 (おねがい) 「そんなわたしのことなんてすきなの?」 (ひとりにしないで) そっと抱きしめられて、抱えられて 彼の膝の上に乗せられる。 ぎゅっと大きな腕に抱きしめられて、 ジノの匂いがあったかくて 心の奥からじんわりしてくる。 「ずっとずっと可愛いよ」 「胸なんて無くたっていいんだよ」 「アーニャの優しさは見えにくいだけで、ちゃんと伝わってるし」 「素直になれないってことを素直に言ってる」 「なにより」 「おれのことだいすきっておもってるから、そうおもうんだろ?」 「そんなアーニャだからこそ、だいすきなんだ」 そう言って優しく唇を合わせられた。 すると嘘つきの唇がほんとを喋り出す。 魔法にかかったみたいに。 瞳から流れ出る塩水と一緒に 「ごめん・・・・なさい」 「すき だいすき」 「そばにいて  ぎゅってして  いつもうそしかいえないし  かわいくないし  わらえてないし  ぜんぜんじのになんてあってないけど」 「きらいにならないで」 「わたしのことだけずっととくべつにして」 「じののとくべつがいい」 「じのだけのとくべつになるから」 優しい掌が私の髪を撫でる。 優しい唇が降ってくる。 涙を掬われる。 全部の行為に 愛しさが募っていく 「アーニャ」 「・・・・なに?」 「約束な?」 「・・・・・・・うん」 「アーニャだけが俺のトクベツ」 「・・・ジノだけ・・私の・・トクベツ」 彼は笑う。 私もつられてぎこちなく笑う。 「・・・午後の授業・・このままサボっちゃおうか、アーニャ」 「・・・・・・うん」 「ここで昼寝でもしようか、いい天気だし」 「・・・・うん」 ジノが制服の上着を脱いで、 私がその上に寝ころんだ。 ジノの腕に頭を置いて、 二人で温かい日差しの下で、眠りについた。 そんな陽だまりの午後。 喧嘩のあとの仲直りにはちょうど良かった。 うそつきなくちびるを すなおなくちびるにしてください あいあるくちづけで やさしいくちづけで