(現代パロ 高校生ジノ×中学生アーニャ) おとなぶっておれはなにもわかってなかったんだ loneliness 俺がアーニャと初めて会ったのは俺が12歳の時だった。 アーニャは9歳だった。 俺は両親共働きで、3人の兄ももういい年で 家を出ていたり、大学だったり。 近所に同じくらいの歳の子はアーニャだけだった。 9歳で俺の家の近所に引っ越してきたアーニャ。 両親を交通事故で亡くし、俺の家の近所に住んでいた 祖母に引き取られたそうだ。 アーニャの祖母は近所でも有名な大きな家に住んでいて お金持ちだという噂だったが 優しいおばあさんだった。 俺が初めてアーニャと会ったとき アーニャはほとんど何も喋らなかった。 元々口下手らしかったのだが 両親の事故のショックで更に寡黙になっていた。 そんなアーニャと俺はよく一緒に遊んだ。 最初はうっとしがられたが、 そのうち心を開いてくれたのか 少しずつであるが話してくれるようになった。 それが暫く続いた。 でも暫くだった。 俺は中学に入って部活を始めた。 俗にいう思春期という時期に入り アーニャともほとんど話さなくなった。 アーニャにも友達がいるって。 そう思ってた。 やがて俺は高校へ入り。 アーニャも中学へ入った。 次にアーニャと会ったのは アーニャの祖母の葬式だった。 それは2週間前の事だった。 元々病気がちだったそうで。 最後はアーニャが一生懸命看病したにも関わらず 亡くなったそうだ。 葬式に行けば、アーニャは学校の制服を着ていて。 泣きもせず、いつもの無表情で座っていて。 俺をちらりと見て 「・・・ありがと」 そう一言言っただけだった。 祖母の遺言で祖母の遺産と大きな家は 全てアーニャに相続されるらしい。 今後の生活費や学費も大丈夫だそうだ。 そう、俺はいつもそうやって 表面しか見てなかったんだ。 学校の帰り。 俺は友達とカラオケに行って、 その後、ゲーセンに行って。 UFOキャッチャーで3回も失敗した友達(といっても一応先輩)に呆れ、 自販機でジュースを買おうとした時だった。 格闘ゲームのコーナー。 そこで見覚えのある桃色のウェーブを見た。 まさかと思ったが 近づくと・・・アーニャだった。 中学の制服を着たまま 無表情で、無言でただレバーを動かして。 「アーニャ」 名前を呼ぶと驚いたように振りかえった。 「・・・ジノ」 「お前、今何時だと思ってんだよ」 「・・・9時」 「中学生の女の子が一人で出歩いていい時間じゃねぇだろ」 「・・・・ジノには・・関係ない」 「・・・お前なぁ」 そう俺をシカトして、細い指でまたコインを入れようとしている 手首を掴んだ。 「・・・なに」 「・・帰るぞ」 「・・関係ない、ジノには」 「帰るったら、帰るんだ!」 俺はそういって無理矢理アーニャを立たせる。 鞄を押し付けると、渋々アーニャは受け取る。 そのまま俺は友達のところへ行く。 「スザク!」 「え、ちょ・・ジノ今すごくいいとこなんだ!!」 「悪いけど、俺帰るな?」 「え!?・・・ああああ!!落ちた!!!ユフィにプレゼントする予定だったのに!  ・・・ってアレ、誰、その子」 「知り合いなんだ。そこで会ってさ。送るから俺帰るから」 「うん。じゃあまた明日」 そう言ってスザクとわかれて、帰り道を二人で歩く。 と言っても話すことがほとんど無い。 俺はこっそり街灯の白い灯りで照らされたアーニャを盗み見た。 葬式の時も思っていたのだが、 アーニャは綺麗になった。 子供っぽさが残ってるが 女らしさも出ていて。 上げられた髪からのぞく白い項だとか。 ぷっくり膨らんだ唇だとか。 ・・・って俺はどこ見ているんだ。 今まで俺の専門は巨乳の同級生以上の女。 それなりの顔だし、女には不自由してないはずなのに。 (だからといって本気で惚れた女は今までいなくて。  続いたのは最短で3日、最長で1ヵ月だ) 「・・アーニャ」 「・・・何」 「・・・えーっと」 名前を呼んだはいいが、何を言おう。 とりあえず思いつくことを言ってみた。 「・・ゲーム好きなのか?」 「・・・別に」 「じゃあなんでゲーセンにいたんだよ」 「暇だから」 彼女は俺の目を見ないでひたすら携帯を弄っている。 終了した会話を再び始めるためネタを考える。 「・・・ちゃんと食ってんのか?」 「・・・料理くらい、できる」 「そっか・・・・。  アーニャは昔から何でもできたもんな・・・」 「・・・・」 アーニャは完璧な子だった。 学業優秀、運動もそこそこ。 外見も可愛らしいし、料理だけでなく家事全般できる。 それに加えて大人っぽくて我儘なんていったところを 見たことがなかった。 だから おれは きづかなかったんだ アーニャを家の前まで送って。 門の前で、別れを言う。 「それじゃ、おやすみな」 「・・・うん」 「あんまり遅くまで出歩くなよ」 「・・・・・」 「携帯のメルアドも電話番号も教えただろ?  なんかあったら、俺に相談しろよな!  俺達、友達だしな!」 「・・・・・」 俺は本気だった。 だけどアーニャにはきっと上辺だけに聞こえたのだろう。 俺は昔みたいにアーニャの頭をくしゃりと撫でた。 「俺、アーニャの事妹みたいに大事にしてんだからな。  あんまり心配かけんなよ。  おばあさんも心配するしな」 「・・・・」 「それじゃあ、バイバイ」 そうやって背を向けた瞬間だった。 制服のシャツの裾を掴まれた。 「・・・・アーニャ?」 「・・・・・・ごめん、何にもない」 「え、そ、そうか」 「・・・おやすみ」 「おやすみ!」 俺はアーニャを顔を見ず手を振った。 思えば、あの時にわかってやればよかったのに。 2週間後、俺はリヴァルとファミレスにいた。 ドリンクバーとフライドポテトだけでだらだら2時間。 もう夕方の六時。 「なぁ、ジノ」 「なんだよ」 「どうしたらミレイ会長は振り向くかなぁ〜」 「まぁ、頑張れよ!」 「はぁ、お前は年上ウケしやすいからなぁ〜」 そんな話をだらだらしていて。 「あー、リヴァル。俺トイレ」 「おー」 そう言って席を立って、 用を足して戻ろうとした時だった。 桃色のウェーブの少女。 見知らぬサラリーマン。 気付かれないように近づくとやっぱりアーニャで。 サラリーマンのような男は俺の知らない人だった。 アーニャはひたすらドリンクバーのオレンジジュースを飲みながら 携帯を弄っている。 食べ終わった皿が何枚かあった。 もうすぐにでも出るのか。 更にこっそり近づくと会話が聞こえた。 「アーニャちゃん、このあと、いいよね」 「・・・・・」 「ね、・・・そうだ。追加五万でいいかな?」 「・・・・・」 「・・あ、五万じゃ駄目だよね。  ・・初めてをくれるんなら十万だよね」 アーニャはいつものあの無表情な瞳で こくりと頷いた。 絶句した。 その会話でアーニャが何しようとしてるかくらい 俺だってわかった。 何かが切れた、ぷつりと音を立てて。 「アーニャ!!!」 「・・ジノ・・・?」 「・・帰るぞ」 「なんだ、君は」 「・・コイツ俺の連れなんで。連れて帰ります」 「・・ジノ、ふざけないでよ」 「ふざけてんのはお前じゃないのかよ!!!」 「ちょっと君、彼女は私と行くところが・・・」 「・・・ホテルにでも?  それ犯罪だろ?」 絶句して真っ青になった男を放って、 俺はまだあの白い手首をとった。 そのままリヴァルがいる席に行く。 鞄を引っ掴んだ。 「リヴァル、ごめん。先帰る。  今度お金払うから、今日は頼む」 「お、オイ、ジノ!!?」 俺はそのまま白い手首を握って、店を出た。 どこに行くわけでもなく、 ただ真っ直ぐ真っ直ぐ、自分の家に向かう。 アーニャは帰り道数回俺の名前を呼んだが 俺が黙っていたままだからアーニャも何も言わなくなった。 自宅に帰り、アーニャを家に入れた。 父は単身赴任だし、今日は母は泊まりがけの出張で 誰もいなかった。 俺はアーニャを自分の部屋に入れて、 ベッドに座らせた。 アーニャが黙って、じろりとあの紅い目で俺を睨んだ。 パンッ 思わず手が出た。 さすがにグーでは殴らなかったが、 アーニャは殴られた頬を押さえた。 「・・何するの」 「お前、自分が何しようとしてたかわかってんのか!!!?」 「・・・・援助交際」 「・・なんでそんな事すんだよ!!!」 「・・別に。ジノに関係ない」 「・・・何言ってんだよ!!関係なくても・・俺は!!」 アーニャは俯いたままポツリと言った。 「なんで・・・こんなことするの」 「・・何言ってんだよ」 「もうやめて」 「・・・・どういうことだよ」 「・・・もう私に構わないで。  友達面も兄のようにふるまうのもやめて」 「・・・なっ・・なんでだよ!」 「・・・どうしても」 「嫌だ。ちゃんと俺の納得できる理由を言えよ」 「ジノのそういうの、苛々する」 「いい人面して」 「自己満足に浸って」 「ジノは楽しい」 「でも私はいい迷惑」 「だからやめて」 そう言って、彼女は俺を睨んだ。 俺はその言葉に何も言えなくなった。 けど、暫くして口を開いた。 「・・・じゃあなんであんなことしたんだよ」 「・・・だから関係ない」 「・・・教えろって。もう関係してんだよ、お前を止めたんだから!!」 俺はそう言ってアーニャの肩を掴んだ。 アーニャはびくりと肩を震わせて、 俺を睨んだ。 紅が揺れている気がした。 そして暫くして 「大人になりたかった、だけ」 ぽつりと言われた言葉。 俺には全然理解できなかった。 「・・・どうして大人になりたかったんだよ」 「・・・言いたくない」 「・・・・言うまで帰さない」 「・・・・・・・・」 暫くアーニャは無言だった。 俺はアーニャの隣に腰を下ろした。 アーニャが興味本位であんなことをするような女には見えなかった。 だからそんなことをしてるアーニャはショックだった。 そしてその理由も。 「・・妹になりたくなかった」 「・・・ジノの妹なんか・・・やだった」 俯いたアーニャの唇から震えるように告げられた言葉。 最初は意味がわからなかった。 小さな唇がぽつりぽつりと話しだす。 「・・・ジノは優しいから」 「・・・妹なんかより・・女として見られたかった」 「ジノは大人だから」 「私なんて見てくれないって知ってたけど」 紅い瞳からぽとりと滴が伝うのを初めて見た。 「私・・・全然大人になれない」 「全然・・完璧なんかじゃない・・・」 「・・・胸・・ぺたんこだし・・」 「それに・・全然だめ」 「ほんとはわたし、すきになっちゃだめなのに」 「・・・わたしのだいすきなひとみんないなくなっちゃうから」 隣から小さく握られた手。 温かいけれど、震えている、小さな手。 「これいじょうジノのことすきになったら」 「ジノもいなくなっちゃったらってかんがえると」 「こわくてたまらないから」 「もうかわまわないで」 その言葉に小さな身体を抱き締めた。 女の子の甘いシャンプーの匂いがした。 アーニャの身体がぴくりと震えて だめ そう消えそうな声が聞こえた。 「・・・いなくなるわけないだろ」 「うそ」 「うそじゃない」 「ジノは・・・おとなのおんなのひとがすき」 「でもアーニャはもっとすき」 その言葉に嘘は一つもなかった。 この小さな小さなか細いいきものは俺が守らないと。 そう思ったんだ。 同時に胸があたたくなって、 おれはずっとしっていたはずなのに やっときづいたんだ であったあのひからこのてをはなしちゃいけなかったんだって もう一度きつく抱き締めた。 アーニャの紅い瞳から大粒の涙が零れた。 「ジノ」 「ん」 「ごめん」 「すきなの」 そう言って本格的に泣きだした小さな彼女に頷いた。 「俺も好きだ」 その言葉にアーニャは俺の肩に手をまわした。 肩に寄せられた唇から嗚咽が零れた。 「ジノ」 「なんだ」 「我儘言っていい・・・・?」 アーニャが我儘なんていうところ 見たことなかった。 俺は頷いて、それを聞いた。 「あ・・・のね・・・ッ」 「・・・さみしい」 「さみしいの・・・さみしい・・・」 強がってばかりだった小さな鎧をはいで 俺はその体を抱きしめ続けた。 さみしいと泣く少女は 大人のふりをして何もわかってなかった俺への罰だった。 でも俺は稚拙で。 どうしたらいいかわからなくて。 だから衝動に任せて、抱き締めて、小さな唇にキスした。 何度も、何度もキスした。 小さな唇が答えてくれるまで、何度も何度も。 そのさみしさがうまるまでなんどもなんども。 そのあと おとなに してほしいと いわれて むりをするな おれはそんなのきにしないといって でも かのじょは じののあったかさがほしい といった。 あのすーつのおとこがのぞんだことを おれはあーにゃにしていた ちくりとむねがいたんだけれど あーにゃはずっと ありがとうと ごめんと だいすきと おれのなまえを ずっとずっとよびつづけた かいらくじゃない あたたかくて いとしすぎるなにかに いっしゅん なみだがこぼれた きっとこれが だれかをほんきであいすることなんだとしった