どうせどうせ どんなに頑張ったって まだ子供 It is "I love you" like a lie. ブリタ二ア第一皇子オデュッセウス殿下と 中華連邦の天子様の結婚式に出席される 第二皇子シュナイゼル殿下の指揮下兼護衛の任を受け、 私とジノとスザクは前夜の婚約パーティへ出席した。 だがそこに現れたのは・・・ゼロ。 彼は紅色の髪の少女を連れていた。 ゼロとシュナイゼル殿下のチェス勝負を見ながら、 ジノは私に言った。 「あの子、こないだのパイロットらしいぜ?」 「・・・ふうん」 先日の借りはすぐにでも返したかったが それは別に今じゃない。 「俺、ああいう子タイプなんだよな〜」 ジノが色目を使って、紅の子に視線を飛ばせば睨まれてしまった。 いいザマ。 なんだかすっきりした。 どうして? パーティの後、明日の打ち合わせを終え 用意された客室へ戻ってきた。 窮屈な制服を脱いで、髪を解く。 髪と体を洗って、 美しく整頓され湯を張られたバスタブに体をつける。 「・・・はぁ」 指先がじんわりと温かくなっていく。 シャンプーは高級品らしく 甘い華の匂いがする。 透明なお湯につかる体。 ほんの少ししか膨らまない胸部。 昼間の紅の女はもっと・・大きかった。 腰回りもほっそりして お尻がもっと大きくて・・。 それに比べて、私のこの貧相は体は。 もっと大きくなったら、私も・・大きくなるのかな・・・。 『俺、ああいう子タイプなんだよな〜〜』 ジノの声が頭の中で何度も響く。 ・・苛々する。 やっぱり男の人はそういうところばかり見る。 ジノの変態。 ・・どうして、こんな事気にしてるんだろう。 まるで ジノに"女"として見てもらいたいみたいじゃ・・ 口元をお湯につけてブクブクとする。 やめて。 こんな馬鹿馬鹿しい・・・。 なんで私がジノなんか・・。 ただの同僚。ただの友達。 なのに・・ どうしてこんなに苦しい? 考えるのが嫌で、タオルをとって、バスルームを出た。 体を拭いて、髪を拭きながら荷物の置いてある寝室へ。 ふとベッドの横の姿見の前を通る。 映ったのは貧相な自分のカラダ。 そっと胸を触ると小さな膨らみ。 なんだか、すごくすごく すごく 「アーニャ!さっきの事の訂正で・・・って・・え・・!!!?」 振り返ると、・・・ジノ。 ・・鍵掛けるの忘れてた。 すごく恥ずかしいところを見られた。 ・・裸を・・・。 真っ赤になってタオルを掴んで体を隠すと ジノに向かって パ――ンッ!!!! 「・・・最低」 「・・ごめん、アーニャ!!わざとじゃ・・」 「・・出てって」 「ごめ・・」 「出てって!!!!!!」 ヒリヒリする手でジノを無理矢理部屋から追い出す。 追い出した直後に涙がぽろぽろと零れる。 ドアを背に、しゃがみ込んだ。 初めて、ジノを打った。 ・・ジノに悪気がなかったのは分かってる。 何か重要な事を言いにきたっていうのも分かる。 でも 『ああいう子タイプなんだよな〜』 頭から離れない。 どうせあたしはこどもで みむきもされないなんてしっているから このきもちもしらんぷり このかなしみだってくるしみだって しらないしらない なにもしらなくて なにもしらないこどものふりをして かれのいもうとのようないちを うとましくおもって うれしくおもって いらいらする こんなきもちしらない こんなくるしいのいや とりあえず服を着た。 ジノには明日謝ろう。 悪くない。 悪いのは私。 コンコン 「・・アーニャ、入っていい?」 「・・うん」 入ってきたのはスザクだった。 「・・さっきのジノからの連絡聞いてないよね?」 頷いた。 視線が上がらない。 スザクはさっきの連絡をしに来てくれたらしい。 それは明日の予定変更。 重要な事だった。 「・・アーニャ」 「・・・」 「ジノの事・・許してやってくれない?」 「・・・」 「ジノもすごく反省してるみたいだし・・わざとじゃないからさ」 「・・もう・・怒ってない」 「・・・そうか、よかった。  じゃあ・・おやすみ」 「・・おやすみ」 ヒリヒリする手を握りしめて、ノックを3回。 だけど視線は床。 顔をあげる事が怖くて。 「はーーい!」 その声が少し怖くて。 扉を開けたジノに謝ろうと思って 口をあけたと同時に手首を引っ張られて部屋に入れられた。 思わず、怖くて目を瞑ると。 肩に大きな手が触れるのを感じた。 「・・ジノ?」 「さっきはほんと・・ごめん・・」 「・・・」 「ノックはしたけどさ・・そのアーニャが返事しないし・・  どうしたのか・・気になって・・なんていうか・・その・・」 「・・・もういい」 「・・・」 「・・ごめん」 「え・・」 「打って、ごめんなさい」 ちゃんとあの蒼い瞳を見つめて言えた。 打った左の頬がまだ少し赤い。 手を伸ばす。 「・・・痛い?」 「・・もう痛くない」 「・・ほんと?」 「ああ」 「・・・よかった」 少しだけ、頬が緩んだ。 ・・ジノが・・笑った。 「アーニャ」 あの大きな手が私の髪を撫でる。 いつもみたいに・・いつもみたいに。 大きな腕がぎゅっと私の体を抱きしめる。 よかった よかった ほんの少し鼻がツンとしたけれど ほんの少し涙が出そうだったけど なんだか・・すごく温かくて 手持無沙汰な手をジノの肩にまわした。 暫くそうしていて ジノは私の肩に頭を乗っけてきた。 「アーニャ」 「・・なに」 「アーニャはさ・・その・・」 「・・なに」 「気にしなくていい」 「・・なにを」 「・・・胸」 顔に血が上って、真っ赤になって もう一度手を上げて 「最低ッ」 だけどその手首をジノに掴まれて 「俺は今のアーニャが好きだからッ!!!」 「・・・え」 「あ・・えっと・・その」 「・・嘘つき」 「え?」 「ジノはああいう女が好きだって言ってた」 「だから・・そのそれは」 「私は・・・どうせ・・子供だから」 「・・・アーニャ」 「・・ないから・・胸」 「・・別に・・俺は、アーニャの事好きだ。  そんな事関係なく、ちゃんと女として・・」 「・・・ジノ・・女たらしだから」 「いや、マジだって」 「・・・信じない・・嘘・・」 「・・じゃあ・・どうしたら信じる?」 「・・・」 そんなのいきなり言われたってわからない。 私は視線を落とす。 すなおになれなくなったのはいつからだろう ほしいものをほしいといえなくなったのは いつからなのだろう 黙りこんだ私の手をジノが掴んで 部屋の奥に連れていかれた。 そのままベッドに腰を下ろされる。 何をされるのかと一瞬不安になったが。 ジノは床に膝をついて、 私の左手をとって。 「アーニャ・アールストレイム卿」 「愛してる」 薬指の付け根に優しく口付けられた・・。 ・・ほんと・・。 「・・キザ、女たらし、馬鹿・・」 「はぁ!!?俺の一世一代の告白を・・・」 「ロリコン、変態、ばか」 「・・アーニャ?」 「ばか」 だけどどうしてこんなにも うれしくて むねがはりさけそうなくらい しんぞうのこどうがはやくてはやくて 「ジノ嫌い」 「・・ん」 「きらいきらいきらい」 「うん」 「きらい」 「うん」 大粒の涙を拒否の意にすればまだ引き返せると思って よくわからないけど怖くて わたしは わたしは でもほんとは 「てのこうは」 「・・ん・・・?」 「そんけい」 「ほおはしんあい」 「まぶたはじょうけい」 「てくびはよくぼう」 「てのひらはねがい」 「ひたいはあいさつ」 「くちびる・・はっぁ・・・・・んっ・・」 「愛情だろ」 「・・・・」 「・・信じてくれる?」 「・・・・」 頷いた直後に、もう一度。 (おはよ、アーニャ) (・・おはよう) (あれ、手首どうしたの?  なんか紫色になってる・・) (・・・スザク、嫌い) (えええ!!?なんで・・・)