×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。





もういちど あなたのわらいごえがききたい your name ブリタニアと合衆国の戦争はまだ続いている。 私は二十歳、ジノは二十二歳になった。 私はこの丘の上の小さな家で一人暮らしている。 彼は相変わらずナイトオブスリーをしている。 私は・・・ただのアーニャ・アールストレイムになった。 理由は簡単だ。 戦闘中、ジノがやられそうになった。 あの紅蓮のパイロット、紅月カレンに。 きっと情けをかけてしまったんだろう。 その一瞬でまわりこまれて、攻撃されそうになって。 気づいたら彼を庇っていた。 私は攻撃を直撃し、そのまま落下。 脱出はできたが損傷は大きかった。 かろうじで命は取り留めたが 私は 聴力を失った。 ナイトオブシックスの座も。 それが十八の頃。 私は金銭には貯えがあったので、 ネオウェルズの郊外の小さな丘の上に 家を買って、一人で暮らし始めた。 何も聞こえない世界での新しい生活の始まり。 一方、彼は私がこうなったことを知った時、 ひたすら私に謝り、自分を責めた。 彼の苦しそうな顔が見える。 でもその唇から紡がれる声はもう聞こえない。 「わたしがしたかったからかばった  あやまるひつようはない」 そう言った。うまく言えていたのか自信はないけれど。 でも彼は今でもずっとずっと自分を責めている。 責めて責めて・・・こないだ、とうとうカレンを倒したそう。 でもそれでも彼はもう昔みたいに私の前で笑ってくれない。 辛そうに辛そうに。 「殺してアーニャの聴力が戻るなら、誰だって殺してやる」 「殺してアーニャの声が戻るなら、皆殺してやるのに」 唇の動きでだいたい何を言ってるのかわかるようになった頃のことだった。 私は聴力を失って・・徐々に声も失った。 私が言える言葉はもう一つしかない。 「ジノ」 彼は毎日私の家に来た。 私は彼の名前だけでも 言えるままでいたくて、毎日彼の名前を呼んだ。 もう唇の形は記憶で、 もしかしたらもうちゃんと言えてないかもしれないけど。 それでも彼は名前を呼ぶと、 辛そうに、だけど嬉しそうに笑ってくれる。 わたしだけのために。 わたしはどこかであまえていた。 聴力の代償で彼を手に入れた気になってた。 だってずっとかれがすきですきで かれのためならこのみをなげだしてもよかった。 だからあのときちゅうちょなくかれをかばった。 あいしてたから。 たとえかれがこのきもちにきづかなくても それでよかった。 働いていない私には時間がたくさんあった。 何をしようと考えて、いろいろやってみた。 料理もした。 手芸もした。 でも働けないから金銭面をどうしようと思っていた頃、 彼は私に大金を渡すようになった。 その度に私は彼に言う。(といってもホワイトボードに書くのだが) 『いらない、はたらくよ、ちゃんと』 「俺がアーニャに受け取ってほしいんだ」 『・・・こんなにほしくない』 「・・・お願い、受け取って。  お願いだから。  俺がアーニャにできることって・・・悲しいけどこんなことしかできないから」 『・・・ここにきてくれるだけでいい。  いらない。きもちだけ、もらう』 「・・・お願い・・お願いだから受け取って」 結局彼に負けて受け取った。 以後も何度もいらないといっても彼は私にお金を渡す。 そんなことが2年も続いた。 私はまた猫を飼いだした。 去年やっと手話を覚えた。 彼も私と話すために手話を覚えてくれた。 今日も日が暮れる。 庭の小さな畑からニンジンやパセリを取ってきて夕食の準備。 コンロの前に立っていると、ふわりと背中を抱きしめられる。 これは彼なりの合図なのだ。彼が来たという。 ふりかえれば、彼。 「ただいま」 手話で伝える。 『おかえり』 「今日のご飯は何?」 『今日は野菜のパスタ』 「楽しみだな」 『待ってて』 「うん」 彼は毎日のように(遠征時以外は)私の家で夕食を食べる。 私のご飯なんておいしくないと思うけど、 彼はおいしいと言って食べてくれる。 私と彼の関係はもはやただの友人。 こんなことをしてると恋人のような錯覚をするけれど。 『おいしい?』 「うん、おいしいよ」 『ほんとうに?』 「疑い深いなー。おいしいってば!ほんと」 『ありがとう』 二人の食卓はそれでも温かい。 彼はご飯を食べていつも帰っていく。 「じゃあな、また明日くるよ」 『・・気をつけてね』 「ああ」 『おやすみなさい』 「おやすみ」 こんな生活がいつまでも続くわけないと知っているのに それでもこの幸せに依存して 彼に依存して 彼の同情に依存して ああ 私はなんて浅ましい女なんだろうか 暫くして一通の手紙が来た。 彼の父からだった。 中には便箋と一生暮らせるような大金の書かれた小切手。 彼との関係をやめるようにという手紙だった。 彼は四男と言っても大貴族ヴァインベルグ家の人間で いつか家のためによい家柄の人間と結婚するわけで いつかこうなるとはわかっていた。 だから私はもう決めていた。 夕食の準備をしていればいつものように温かくなる背中。 ああ これが最後だなんて思いたくない ねぇ ずっと・・・・そんなこと言えないのに 「ただいま」 振り返って、少し微笑む。 『おかえり』 「今日のご飯は?」 『・・・ジノの好きなもの』 「え、あ!ほんと。俺の好物ばっかり。どうしたんだ?今日は」 『・・たまには、そんな日もあっていい』 「まぁ、そうだけど」 『リビングで待ってて』 「うん、分かった」 彼はそう言ってリビングへ行った。 私は・・何も言えなかった。 いつも通りにご飯を二人で食べた。 彼はいつも以上においしいと言う。 その言葉がいつも嬉しくて、 いつも・・・うれしくて。 その日は暑くて。 『お風呂入っていったら?』 「いいの?」 『うん』 「じゃあ入る」 彼が入って出た後に、 「アーニャも入っておいでよ。  俺明日休みだから、まだいれるし」 そう言われて、お風呂に入って出てきた。 お風呂から出れば 彼は持ってきたのかシャンパンを一本開けていた。 グラスに入れて、二人で乾杯した。 少しだけいつもと違う夜。 ねぇ、これは別れを悲しむお酒なのかな。 「アーニャ?」 『何?』 「どうしたの、ぼんやりして」 『・・・別に』 「そっか」 どうやって話を切り出そうか考えていた。 でも・・・やっと自分の中で意見がまとまった。 「ジノ」 私が言えるたった一つの言葉。 もうこれも言えなくなるね。 私 今度こそ 喋れなくなるね 「なぁに、アーニャ」 もうその顔も見れなくなるね。 ね、私ちゃんと今でも貴方の名前呼べてるかな? 『有難う、迷惑かけてごめんね。  ・・・・・もうここには来ないで』 次の瞬間彼の顔色が変わった。 「・・・どうして?」 『ジノは忙しい。ここに来るのも時間がかかるから』 「・・今までだってそうだっただろ?  なんで今更・・。それに俺は別に来たいからきてるんだし」 『・・いいの、もう。ともかく・・・もうこないで』 「・・・なぁ、アーニャ」 「コレ何?」 彼が手から取り出したのはあの手紙だった。 私は目を見開いた。 いつ・・見つけたのだろう。 『・・・それ・・どうして・・』 「・・・ごみ箱に突っ込まれてたの見つけた。  ・・まさか俺にもう来るなって言ってるのは・・この手紙のせいか?」 『・・・違う』 彼は立ち上がって私の肩を掴んだ。 「嘘だろ!!本当はうちの人間に何か言われたんだろ!!?  アーニャ、気にしなくていいんだ、そんなの・・俺は!」 私はブンブン首を振った。 「ジノ」 『違うの』 『私・・駄目なの、このままじゃ』 「何が駄目なんだよ」 『このままじゃ・・ずっとジノに依存する』 『ずっと傍にいてほしくなる』 『でも・・ジノは私とは一緒にいれない』 『いつか誰かと結婚して』 『家族を持って』 『幸せにならなきゃ』 「そんなの・・」 『それに・・わたしは』 頬を伝いだした涙。 『・・ジノのこと幸せにしてあげられない』 『ジノに幸せにしてもらえた』 『でも、私はジノに何も返せてないよ』 彼は大きく首を振った。 「違う!俺は・・俺はっ・・!」 「ジノ」 何度も呼ばせて。大好きなの、あなたの名前。 もう・・呼べなくなるから。 『幸せだった。ジノにたくさん幸せ貰った』 『でも・・私は貴方を幸せにしてあげられないから』 『・・わたし・・何もしてあげられなかった・・・・・』 「アーニャ・・俺は・・・」 『・・・・だから・・・』 私は肩にのった彼の掌を自分の胸元に持ってきた。 彼は驚いたように私を見つめている。 『・・・抱いて』 「・・・何言ってるんだよ、アーニャ」 『もう私』 涙があふれて顔が歪む。 『こんなことくらいしかあなたにしてあげられないよ』 次の瞬間抱きしめられた。 大きな腕で。 『ごめん。つらかったね』 『自分のせいで耳が聞こえなくなった女と一緒にいて』 『自分を責めて・・』 『もういいから。私を忘れていいから』 『もう一度笑ってよ』 『あの頃みたいに・・・笑ってよ』 最後だから許して、神様 この想いを伝えることを 『笑ってるジノがすき』 『ジノがすき』 『愛してるの』 「しってるよ」 涙に潤んだ瞳は彼も一緒だった。 そして、泣きながら・・・笑った。 昔みたいで・・辛そうじゃない・・笑顔で・・ 「だって俺も愛してるから」 苦しいくらい抱きしめられた。 涙が止まらないよ。 貴方の声が聞きたいよ。 もう一度。 『アーニャ』って呼んで。 昔は鬱陶しかったのにね。 今じゃ後悔してるの。 「ジノ」 貴方の名前、呼べてるかな? それだけが不安で・・いつもいつも 「何?」 『私、ちゃんと今でも『ジノ』って呼べてる?』 「・・呼べてるよ、呼べてるにきまってるだろ」 『・・・ほんとに・・?』 「アーニャは疑い深い・・よ・・信じて・・俺のこと」 『泣きながら・・言われたら・・・説得力無い・・』 「・・アーニャも・・泣いてる・・だろ」 よかった・・やっと笑ってくれた・・・ 泣き笑いだけど・・いいよね・・・ あなたのなまえをよべることが いちばんのしあわせだって はじめてきづいたの もしみっつだけあなたのこえがきけるなら あなたのこえで 「アーニャ」とわたしをよぶこえと たのしそうにわらうこえと 「あいしてる」 そういってくれるこえがききたい