だいすきでおかしくなっちゃいそうなの secret 「ジノ」 「ん?」 ラウンズに用意された自室に戻る時、 呼びとめられた。 今日はこれで任務は終了。 あとは明日に備えて眠るだけ。 「どうした?」 アーニャは少しだけ、考え込んだ後・・・。 「わ・・どうしたんだ?」 「別に・・・」 アーニャは俺の胸に飛びこんできた。 腰に腕をまわして、ぎゅっと俺を抱き締める。 まるで母に甘える子のように。 俺はその身体を上から包み込むように抱き締めた。 「アーニャ・・」 「ジノ・・・おやすみ」 「おやすみ」 それだけして、アーニャは部屋に戻った。 俺はその小さな背中を見送って、部屋に戻った。 なんだかモヤモヤを胸に抱えたまま。 部屋に戻って、ドアを閉めて、そのままドアにもたれた。 自分の体をぎゅっと抱き締める。 ジノの匂いがする・・・。 あったかい・・・あったかい・・。 ジノの傍にいるとあったかくてあったかくて。 ずっと一緒にいたくなる。 今わかれたばっかりなのに あしたも会えるのに どうしてこんなに声が聞きたくなるんだろう 無性に どうしてあの笑顔に胸が押しつぶされそうなくらい ドキドキするんだろう なぜかわからないけど すごく抱きしめられたくて ぎゅっと抱きしめて 抱きしめられて 最近こわい ジノがすきで すきで・・・ どうにかなっちゃいそうで・・こわい わたしが“すき”で わたしのこころが パンクしちゃいそうで いつからこんなふうになってしまったの どうしてこんなによわくなっちゃったの ね、つぶれそう ね、だきしめて ねぇ、さっきわかれたばっかりなのにさみしい ねぇ、だきしめて なみだがとまらないくらいなら どうしてすなおにいえないの コンコン なんだか誰にも会いたくなくて、 返事もしなくて。 でも後ろの壁の感覚がなくなって、 ドアが開いたんだって気づく。 「・・・アーニャ」 振り返れば、ジノ。 そのまま抱きしめてって言えばいいのに、 何かが邪魔して涙を隠すのに必死になってる。 右手が、左手が必死に涙を拭いている。 「アーニャ」 部屋に入ってきて、ドアを閉めて、 そのままあのおっきな腕に抱きしめられる。 せっかくふいたのに、また漏れてきて、意味がないの 「ジノ」 「ん?」 「もっと呼んで」 「・・・アーニャ」 「もっと」 「アーニャ」 そのテノールの声でもっと私の名前を呼んで。 貴方の匂いがする腕で抱きしめて。 胸がはちきれそう。 ねぇどうしたらいいのかな もう破裂しちゃう・・・。 こわいこわいこわい どうしたらいいの 「ジノ」 「・・・どうした、アーニャ?」 「わたし・・・わかんない」 「・・・なにが・・?」 ああはち切れる。 ぱちんと音をたてて全部崩れちゃう 「じのが・・・すき」 「すきで・・・・・・すきで・・・」 「おかしいの・・わたし・・・」 「へんなの・・どうしたらいいか・・・わかんない・・・」 そう言って泣きじゃくる私は 全然威厳なんてない ナイトオブシックスなんかに見えない ただの15歳の少女で だめ・・・なのに・・・ こんなの・・だめなの・・・に・・・ こんなわたし・・・わたしらしくないのに・・・ 身体が浮遊する感覚。 ふわりとジノに持ち上げられて、 そのままジノはベッドに座った。 私は彼の膝の上に乗せられる。 「アーニャ、すきすぎて、おかしくなりそうならさ」 「すきなきもちを」 「ちがうことばにおきかえて?」 「俺がいつもアーニャにいってる言葉」 「すき一つじゃ伝わらない気持ちが全部俺に伝わるからさ」 そう言って優しく髪を撫ぜる手がたまらなく愛しくて。 私は涙を拭う手を止める。 彼の左手の親指を右手で包み込む。 濡れた瞳で蒼を見つめれば、 少しはにかんで柔らかいキスが落ちてくる 額に 濡れた瞼に 頬に 赤くなった鼻の先に 最後に嗚咽が漏れる唇に 唇の柔らかい感触が私のに伝わる。 二人の重なった体温が離れて、 ゆっくり紅と蒼の視線が混じって。 「ジノ」 「・・ん・・・?」 すきだよ でもそれだけじゃぱんくしちゃうから そっと唇を彼の右耳に寄せる。 「なぁに?アーニャ」 「あのね」 ふあんなこともいっぱいあるし ときどきわからなくなることもいっぱいあって くるしくもなるけど たぶんこのきもちのなまえが こいなのかなっておもう だからぱんくして なみだがでないように ときどきこうやってつたえるから だから わたしのそばでそのこえをきかせて わたしをだきしめて わたしのそばでわらって わたしにやわらかいきすをして ちいさなこえだけど ほんのごもじだけど ちゃんとつたえるから 「あいしてる」