形にならない贈り物を song of a wish 0時過ぎ。 自室のチャイムが鳴った。 こんな遅くに誰だと扉を開ければ、 アーニャが寝巻きで突っ立っていた。 寒いから中に入るように促せば こくりと一つ頷いて ついてくる。 ホットチョコレートを作ってやって 自分にはコーヒーを淹れて。 二人でベッドに腰かけて飲む。 喉を転げ落ちる苦味と温かさを感じながら。 「・・どうしたんだ?こんな遅くに。  眠れない?」 アーニャは何も言わず、首を横に振った。 俺は彼女が何故ここに来たのかわからなくて 首を傾げれば、小さな唇が開いた。 「・・・おめでとう」 「え?」 一瞬何のことを言われているかわからなかったが ふと思い当たることを考えてみた。 カレンダーをちらりと見て気づく。 ああ、今日は自分の誕生日なのだと。 「有難う・・アーニャ。それ言いに来てくれたの?」 「・・・うん」 「・・一番に言いに来てくれたんだ?」 「・・・・・・・・うん」 ちょっと恥ずかしいのか頬を染めて 紛らわすようにホットチョコレートに 唇を寄せる仕草が愛おしい。 彼女の少し薄い寝巻きが気になって ベッドから毛布を引っ張って 二人の身体をくるんだ。 「・・・あったかい」 「よかった」 毛布の中で俺の掌が彼女の右手を探している。 お目当てのものを見つけて そっと握ればぎこちなく指が絡められる。 肩に彼女の体重がかかる。 可愛い 愛しい 目に入れても痛くない 小さな恋人 「プレゼント・・・」 「え、何かくれるの?」 小さな少女はこくりと頷いた。 ごそごそとポケットを探って 握りこぶしを俺に向けた。 手を出せということらしい。 俺の掌に乗っていたのは 小さな紙切れだった。 折りたたまれたそれを開けると 「『今日一日ジノのお願いを聞いてあげる』?」 彼女はこくりと頷いて言い始めた。 「ジノ・・普通のプレゼントじゃ、意味無いと思った。  高価なものもジノだったら買えるし」 「・・別にアーニャがくれるものならなんでも嬉しいけど・・・」 「・・・・それでスザクに相談した」 「・・・スザクに?」 「・・・イレブンの子供の話。  親が誕生日にプレゼントなんてあげられない。  お金がないから」 「うん」 「だから、こうやってチケットをあげるんだって」 「?」 「『肩叩き券』とか『お手伝い券』とか・・」 「へぇー」 「物じゃなくったって何かジノに喜んでもらえたら  いいんじゃないかなって言われた」 「そっか」 「・・・いや?」 「ううん!有難う!すごくうれしい」 「・・・・本当に?」 「ああ、だってアーニャが俺のお願いきいてくれるんだろ?」 「・・・うん」 「・・・えーっと!じゃあ早速お願いしてもいいか?」 「・・・・うん」 部屋を暗くして、 二人でベッドに潜りこんだ。 小さな掌を握って、 細い身体を抱き締めた。 「・・・うまくない・・・私」 「・・アーニャの声が聞きたいから」 「・・わかった・・・」 ギュッと抱きしめて 彼女の柔らかな胸元に顔を寄せれば 抱きしめ返された。 やがて鼓膜を震わすのは 優しい子守唄。 知らない曲だけれど 優しくて優しくて 次第に瞼が重くなる。 「アーニャ・・」 「ん・・・」 「ありがと・・・おやすみ」 「・・おやすみ・・ジノ」 「・・・いい夢見れそう」 「・・・よかった」 「・・・・大好き・・・アーニャ」 「・・・・・うん」 二つの小さな寝息 二つの鼓動 互いの体温に愛しさが募って 君の歌に心が溶ける。 形にならない贈り物を有難う。 その贈り物の名前は 君の愛