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小さな拒絶 それは可愛い乙女心とは知らず strawberry flavor 二人きりの部屋。 ベットに腰かけて、隣に座る彼女を見つめた。 他愛もない会話がぷつりと沈黙。 それを見計らって、小さな彼女の左手に 俺の右手を添える。 彼女が顔をこちらへ向けてきたのと同時に そっと顔の距離を縮める。 紅い瞳を見つめながら、ゆっくり瞼を落とし 小さな唇に自分のを重ねようとした瞬間。 「・・・だめ」 そっと胸を押されて拒絶を示された。 彼女の顔は違うところを向いている。 まただ。 「なんで!?」 「・・・なんでも」 「俺さ、アーニャの気に障ることした・・?」 「違う」 「じゃあなんで!」 「・・・・・今はキスしたい気分じゃないから」 「どうしたらしたい気分になるんだよぉぉおおおお!」 「・・・・したくないの」 そういって、彼女はそっぽを向いて俺の部屋から出ていった。 後ろ姿がドアに吸い込まれた瞬間、溜息をついた。 彼女がキスを拒否するようになったのは 三日ほど前から。 それまでは普通にキスをしていたし、 俺だって特に彼女の気に障るようなことをした覚えはない。 でも彼女は拒否する。 ベッドに寝転がって、考えてみた。 そういえば彼女は三日前から甘い匂いがする。 甘い匂いはいつもするのだが・・・いつもとは違う・・ 苺の匂い。 香料の苺の香り。 そういえばあれはなんだったのだろうか。 ・・・まぁ今はそんなこと関係ないのだが。 「・・・うーん・・・やっぱり、直接聞くしかないよな」 ベッドから起きあがって、部屋を出た。 廊下を進み、目的地は彼女の部屋。 ノックを三回。 ドアの向こうから聞こえたのは小さな返事。 でもドアは開かないということは 勝手に入っていいということなのだろうか。 そっとドアを開ける。 見慣れた彼女の部屋。 突き進めば彼女は寝室にいた。 ドレッサーの前にそっと立ちすくんで、 複雑そうな顔で、 右手で唇に触れていた。 左手には何かが握られている。 「アーニャ?」 はっとしたように彼女は俺を見て 左手に握られていたものを隠すように ポケットに押し込んだ。 「何」 「それ、何?今何隠したの?」 「・・隠してない」 「じゃあ見せて」 「・・大したものじゃない」 「見たい」 彼女は視線をそむけた。 どうやら本当に見せたくないらしい。 もしかしたら彼女が隠したものが キスを拒否する原因かもしれない。 そう思って、彼女に詰め寄った。 彼女は逃げようと、背を向けたが 背中からぎゅっと抱きしめて 身動きのとれないようにする。 「・・・ジノ」 「はい、出して」 「離して」 「隠したもの見せて」 「隠してない」 「じゃあ見せて」 「・・・いや」 「・・・・・・アーニャ・・・」 彼女をこちらへ向かせて、 真っ赤な瞳を見つめた。 彼女は複雑そうに顔を歪めた。 そして 「えい!」 「あ」 隙を見計らって、彼女のポケットに手を入れた。 俺の右手が捕まえたそれは。 「・・・・何これ、・・・リップクリーム?」 小さなリップクリーム。 苺の香りと書かれている。 桃色のスティックが可愛らしい。 どうやら彼女の苺の香りの原因はコレらしい。 「・・・?なんでこれ隠したの?」 「だから隠してない」 「ふーん・・・・」 「じゃあ、なんでキスしてくれないの?  もしかしてこれと関係あったりする?」 問いかければ、彼女は少し頬を赤らめて 視線を逸らした。 「・・別に関係ない」 「アーニャってほんとわかりやすいな」 「・・・関係ない」 「どうして、キスしてくれないの?」 彼女に顔を近づければ、そっぽをむかれる。 正面にきた上気した頬に、唇を落とせば 更に朱に染まる。 「・・・教えて?」 「・・・・・・・・・ジノ、私のこと変だと思う」 「俺がアーニャのこと変だなんて思うわけないだろ!」 「・・・・・・・・・絶対ばかにする」 「俺がそんなことしたことある?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・言いたくない」 「どうして?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・恥ずかしい」 「絶対笑ったりばかにしたりしないから教えて」 真剣に彼女を見つめれば、彼女は暫く考えて 小指を差し出した。 「・・・?」 「ナナリー皇女殿下に聞いた。  イレブンはこうやって約束するって。  ・・・小指出して」 「・・・ああ」 小さな小指に自分のを絡めた。 「・・・ばかにしたらジノ嫌いになるから」 「ああ」 「・・・・誰かに言ったらジノ嫌いになるから」 「わかった」 「・・・・約束」 「ああ、約束」 絡めた小指を解いた。 アーニャは俯いて、俺は何か言いづらそうにしている彼女を見ていた。 暫くして、小さな呟きが聞こえた。 「ジノが」 「ん?」 「・・・私の唇が柔らかくてぷるぷるしててすきって言った」 「ああ、うん、言った」 「唇・・・荒れてるから・・治るまで・・キス・・したくない」 小さな乙女心に翻弄された三日間。 拒否の原因は本当に可愛らしいもので。 ばかにできるわけないじゃないか。 だってこんなに可愛くて こんなに恥ずかしそうに俯く君を 愛しくて愛しくて気が狂いそう 「・・・・ばかだと思ってる・・?」 「・・・思ってるわけない」 「嘘」 「嘘じゃないって」 「だって、何も言わない」 「・・・・アーニャが可愛すぎるから」 ぎゅうと抱きしめれば、小さな手がそっと背中にまわった。 「・・・俺はアーニャの唇が荒れてることより  アーニャとキスできない方が辛いんだけど」 そっと顔を上げた彼女の唇に口付けた。 かさついた感触は確かにあるいが些細なものだった。 それよりも 優しい感触と甘い甘い苺の香りに溺れていくんだ。 「・・ジノ」 「・・・ん?」 「いやって言った」 「俺は気にしてないって」 「・・・・・・でも」 「それにほら」 「?」 「今のアーニャの唇は苺味だし」 かさついた感触も合成香料の香りでさえ 愛しさが募る。 乙女心を知らなかった君に それを植え付けたのは自分なのだと 教えてくれるから。