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舌先が欲望を紡げば



















































love gloss



















































女ということを隠して情報屋をして、

もう何年になるだろうか。

今じゃめったに女らしい格好をすることが無くなった。

胸だって日頃はさらしで潰してる。




そんな日だった。

中学時代でまだ女らしかった頃の女友達が会おうと言ってきた。

彼女は俺の知り合いの中でも当時気があっていた友達だった。

まぁ、いいだろうと、了承した。




が、彼女に男の姿で会いに行ってもわからないだろうと思い、

いつも被ってる短髪のウイッグをとって、

ちゃんと女の格好で化粧もして、待ち合わせ場所に向かった。




彼女が指定した待ち合わせ場所が池袋だったのは

ちょっと落ち込んだが。

オススメのお店でご飯を食べて、

思い出話を話した。




その後池袋で彼女と別れた。

この格好だし、女物の服やら化粧品をたまには見ておくか、などと考えて

池袋の街をぶらぶらしていた。





服の入った紙袋を手に、さて新宿に帰ろうとした時だった。

遠目に見えたのは金髪のバーテン服。

さすがに高校時代仲の良かった

新羅、ドタチン、そしてシズちゃんの三人は

俺の性別が女であることを知っていた。

(彼らの前に女らしい格好で出たことはなかったけど)




さすがに今日はヒールだし、

シズちゃんにバレたら逃げ切れる自信がないと思い、

バレないうちに帰ろうと

道を変えて駅へ行こうとした。

彼の位置をもう一度確認しておこうと、

彼の方を見た瞬間

















マズイ、目があった。















彼が何かに気付いたのかこちらに近づいてくる。

俺は早歩きで路地裏に逃げ込んだ。

早歩きが小走りへ、それが走りに変わってくる。

慣れないヒールが痛い。











どこかでやり過ごそうと思った。

行き止まりの裏路地に大きなゴミ箱。

その影に隠れてやり過ごそう。


そう思ってゴミ箱のところにしゃがみこんだ。














ちらりと自分が来た方を見ると

シズちゃんはキョロキョロしている。

そして、違う方に行った。





よし・・。大丈夫。





ほっと溜息をつくと

裏路地なのに、一層暗くなった。


違う・・自分の前にいる人間の影が


自分を覆ってるんだ。







恐る恐る視線を上げる。

黒の革靴。

黒のズボン。

白いシャツの黒のベスト。

蝶ネクタイ。



・・・サングラスと金髪。








困惑したような顔で俺を見てる。









「・・テメェ、ノミ蟲・・だろ?」









あくまで確認のような、言葉。

気づいている。




「・・何、シズちゃん。

 今日は本当に勘弁してくれないかな。

 走っちゃったせいで、足が痛いんだよ」




立ちあがって、ぱんぱんとお尻を叩いた。






「・・・なんで・・んな格好してんだよ」

「・・・シズちゃん、知ってるでしょ?

 俺、一応女なんだけど・・。

 女が女の格好してたら悪いの・・?」

「・・その髪・・カツラか・・?」

「ウイッグって言ってね。

 これは地毛だよ。いつも短髪の方がウイッグ」

「・・じゃあ、本当は髪長ぇのか・・?」

「うん。これが地毛だからね」






どうでもいいことを聞いてくる。

今日は殴りかかってもこない。

どうしたんだろうか。







「・・何、化粧なんてしてんだよ」

「あのさ・・いつもは男装してるからしてないけど。

 一応俺23だしね、この年になったら化粧しなきゃいけないでしょうが」

「だから、なんで今日はんな格好なんだよ」

「・・・ちょっとこの格好で会った方がいい知り合いに会ってきただけ」






何故か俺に干渉してくる。

何なんだ、シズちゃんらしくない。






「・・・変なこと、してきたんじゃねぇだろうな」

「・・変なこと?」

「その・・取引に・・身体を・・とか・・」

「シズちゃん、俺が何のために男装してると思ってるの?

 俺は自分の性別を利用して情報を得たりすることは

 一切しないよ。人を侮辱するのもいい加減にしてくれる?」




睨めば、視線を逸らされた。

一体何だ。いつものシズちゃんなら舌打ちして

殴りかかってもおかしくないってのに。





「・・シズちゃん、どうしたのさ」

「あ゛?」

「いつもなら殴りかかってるでしょ?

 ・・・嗚呼、もしかして俺がこんな格好だからやりにくいって?」





それならそれで好都合だ。





「まぁ、今日は見なかったことにしてよ。

 今から新宿に帰るしさ。

 それじゃ」





ひらひらと手を降って、

帰ろうとした時だった。







手首を掴まれ、壁に押し付けられた。








「・・・何、まだ、なんかあるの?」







視線が重なった。

でもすぐにそれは私の視線の下を行く。







「・・・口に涎ついてんぞ」

「・・はぁ?」









何を言ってるんだと思ったら

唇にシズちゃんの指が触れた。

指太いな・・やっぱり男の人の指だなぁって思ってたら

その指は唇をふにふにと押した。








「・・ベタベタする」

「もしかしてそれのこと涎って言ったの?

 リップグロスだっての。誰が涎なんて唇に塗るかっての。

 わかったらさっさと離し・・・て・・・ッ!?」








唇に触れたのが、指じゃなくて、唇になってた。









驚いて目を見開くと、

真っ赤な顔して、瞼を閉じて口づけるシズちゃんの顔があった。

蛸みたいだ。




シズちゃんのキスは中学生みたいなキスだった。




一度、ちゅっと触れ合って

角度を変えてもう一回

最後に長めに一回。





舌を入れるわけでも吸うわけでもないのに。

何故か顔が赤くなった。










「な・・に・・してんの・・・」

「・・・ッ・・うっせぇ・・」









何故かぎゅうと抱かれ(それでも手加減してた)

首元に頭を埋められた。







































「臨也のくせに、んな格好してんじゃねぇ」



















































う わ っ


正直な感想がこれだった。

なんだ、この気持ち。

凄く心臓が速い。

っていうかシズちゃんの心臓も速い。




指先から、紙袋の紐が零れた。

ぱたりとそれが地面に落ちる音がする。




指を、そっとシズちゃんの胸に添えた。


精いっぱいの強がりで笑ってやった。






「何、してんだよ。

 君が今抱いてるのは君が憎くてたまらない

 折原臨也だよ?

 それにしてもさっきの幼稚なキス、なんだよ?

 童貞君はキスもしたことないの?

 まぁいいや。今のことは忘れてやるからさ・・・。

 早く離せ」







早口で捲し立てて、

おそるおそる視線を上げた。














男の顔をしてた。













思い切り手首を掴まれて、どこかへ連れていかれそうになる。



「ちょ、どこ行くんだよ!!
 
 っていうか、待って、買った服!!」

「・・チッ!!」




落ちた紙袋を拾ったシズちゃんはずんずんどこかへ歩いていく。





「も、何だよ!」

「・・・家」

「は?」

「テメェが、童貞童貞言うのが悪い」

「・・何言ってんの?話が見えな・・・」






その時、自分が向かっている場所に気付いた。

すぐ近くにシズちゃんのアパートが見えた。

そのままシズちゃんの部屋に無理矢理連れ込まれて、ベッドに押し倒された。








「・・幼稚なキスで悪かったな・・ッ」







「なら、テメェが大人のキスとやらを俺の教えろや」









状況はさっきよりも更に悪化していた。











「え、ちょ、なんで、そうなったの・・!」

「テメェが悪いんだろうが、ノミ蟲」

「俺の何が悪いんだよ!」











そしたら、シズちゃんが真っ赤な顔して

俺を見下してきた。












「お、お前が、そんな、色っぽい格好して


 フラフラ歩いてるから悪ィんだろうが!!」











罵倒と同時に唇が降ってきた。

ちゅっと触れるだけのキスが一回。

でももう一度触れた瞬間、

シズちゃんの舌先が俺の唇を舐めた。

本当にそれであってるのか、

自信なさげに、私に問いかけるように。





子供みたいで可愛いなぁと思った。




私はやっぱり唇を開かなかったけど、

ちろりと彼の舌が私の唇を舐める。




泣きそうな目をしてた。




多分自分でやってて困惑してるんだろうな。

無理矢理こんなことしてることにも罪悪感感じてるって顔してる。





不覚にも可愛いなんて思ってしまったから。

ばぁかって心で笑って、

微笑んでやった。






抵抗していた指の力を抜いて、

金髪に絡めたら、

シズちゃんは驚いたように俺を見た。


唇を少し開けてやった。



ぬるりと侵入する舌先。









「んぅ・・っ・・ぁ」









舌を絡めて歯列をなぞる。

厚い舌をちぅと吸う。




何度もやってやると、

覚えたのかシズちゃんが積極的になりだした。








何分キスしてたんだろうか。

やっと、唇を離された時、

唾液が糸を引いた。







唇が唾液に塗れてる。

さっきのグロスじゃあるまいし。






はぁはぁと荒い息が静かな部屋に木霊する。

外は肌寒いくらいなのに、ここだけ熱帯夜みたい。





「・・シズちゃん、重い」





圧し掛かってきたシズちゃんの胸板を軽く押すと

シズちゃんは真っ赤な顔して退いた。




「・・なあ」

「ん」

「・・悪・・かった」

「・・俺が色っぽいカッコしてたからって発情したの?

 溜まってるなら風俗行きなよ」

「・・・違ぇ」
























「・・よく、わかんねぇけど、


 ・・キス、したかったんだよ、お前に」























その言葉に、なんだか何も言えなかった。

シズちゃんは何も言わずにもう一度唇を重ねてきた。

舌先が唾液を唇に塗る感覚が

グロスを塗る感覚に似てる気がした。