(付き合ってる前提、ゲロ甘)



ただ、ただ。



















































unknowing time























































とりあえず、尋常じゃないくらい忙しかった。

いつもはこんなことないのに

面倒な案件やら、依頼やらが重なった。

お陰で波江にも小言を言われる始末。




おかげで暫く池袋にも行けず、

新宿の自宅で缶詰状態だった。




だが、その忙しさもあと少しで終わる。

いよいよ終わりが見えてきたので、

波江に休みをやって、

あとは自分でやることにした。



彼女が帰ったのを見届けて、

座りっぱなしのパソコンデスクの椅子に

もう一度腰をかけた時だった。





ドアのチャイムがなった。

そういえばさっきピザ屋に電話したはずだ。

(勿論波江の携帯じゃないからね)

ピザが届いたのかと、ドアを開けたら

無表情のシズちゃんが突っ立っていた。






「・・・え・・何?」

「・・・入れろ」

「・・俺、今、仕事してるんだけど」

「いいから入れろ」

「・・はぁ・・。書類とか触らないでよー」






シズちゃんが部屋に入って、

ドアを閉めようとした瞬間に

ちょうどピザ屋が来た。

お金を払って受け取る。






鍵をかけて、リビングに戻れば

シズちゃんがソファーに座ってた。






「シズちゃん、ご飯食べた?

 俺今からピザ食べるけど、いる?」

「・・食う」






ローテーブルの上にピザの入った箱を置いて、

冷蔵庫から麦茶やらを取ってくる。







俺はそこからピザを二切れほど皿にとって、

麦茶の入ったコップと皿をパソコンデスクに置いた。





「あー、俺仕事しながら食べるからさ、

 後そのピザ食べていいよ」





俺はそれだけ言って

ピザをくわえながら、パソコンに視線を戻した。






書類を作りながら、ピザを食べているシズちゃんに視線を映す。

っていうか、何で来たんだよ。






最近シズちゃんに対して嫌がらせをやった記憶はない。

忙しかったし。

それに、もし怒っているなら俺はもう怒鳴られているはずだ。











シズちゃんに好きだと言われたのは、半年ほど前だっただろうか。

最初はシズちゃんの純情を弄びまくって、

ボロ雑巾のように捨ててやろうと思ってた。



いつも通り喧嘩して、

見かけは付き合ってるようになんて見えなかった。



でも、二人きりになるとシズちゃんは、優しかった。






裏切って、酷いことして、傷つけて、

それでもシズちゃんは二人っきりの時は

何も言わずに抱きしめてきた。





気づいたら、もう落ちてた。

そんなことできなくなってた。






ごめんねと何度も泣いて謝ってた。

やっと自分の気持ちを理解した。

好きで好きでたまらなかったのに、

傷つけてシズちゃんの愛情を試すようなことしかできなかった自分が

情けなくて仕方なかった。







そんなこんなでちゃんと両想いになって三か月。

って・・なんか思い出したら恥ずかしくなってきた。




とまぁ・・だから、シズちゃんに嫌がらせとかをした覚えはない。







・・ほんと用件、何だろう。










「・・・ねぇ、シズちゃん」

「・・なんだ」

「何しに来たのさ?
 
 俺になんか用事あるの?」









シズちゃんはむっとした顔でこっちを見て、


「こっちに来い」って言った。






「なんで?」

「・・いいから来い」






ぽんぽんとソファーの自分の隣を叩く。

俺は仕方なく作業を止めて、

椅子から立ちあがってシズちゃんの隣に座った。










「・・・で?」

「・・テメェ、何で二週間も連絡しねぇんだよ」

「いや、したよね?『暫く仕事が忙しいから会えない』って」

「にしても連絡ぐらいしろ」

「仕方ないだろ。

 情報は生ものなんだよ、鮮度のあるうちに売買しなきゃいけないの。

 今回はいろんな依頼が重なって忙しかったんだって、ほんとに」







シズちゃんは納得いかないような顔で

視線を逸らした。

俺は溜息をついた。

 



「それだけ?」

「・・・違う」

「じゃあ、なんで来たんだよ」

「・・・・来たら駄目なのかよ」

「・・駄目じゃないけど」




「じゃあ・・いいだろ」




































「・・その、彼女の、家なんだし」
















































ぽんっと赤くなるシズちゃんを

ウブだなぁと思いながら見つめる。




「・・そうだね」




そして、気づく。






「可愛いこと言ってくれちゃってるけど、

 口の端にピザソースついてるよ」

「え」






シズちゃんは手でそれを取ろうとしてるけど

取れてない。

不器用だなーと思いながら、

指先でソースを掬い取った。








「さてさて、シズちゃん。

 王道はここで俺がこのソースをぺろっとかしてきゃっ☆な展開だけど

 ・・して欲しい?」








にやにやしながら意地悪してやった。

シズちゃんは少し眉根を寄せたけれど

何も言わない。









と、思ったら指先を生温かい感触が包んだ。







ちゅっと舌で指を舐められて

思わずびくりと腰が疼く。






最後に指の腹をちゅっと吸って

シズちゃんはそこから唇を離した。








「なぁ」

「・・・何」

「・・・かまえ」

「は?」








それだけ言うと、

シズちゃんはソファーに寝転んで

俺のお腹に顔を埋めて、

腰に腕を回してきた。






「かまえ」って・・・





「構ってくれってこと?」





シズちゃんを見下ろせば

耳まで真っ赤にして顔をお腹に埋めたまんま

こくこく首を振ってた。
































なんだこのかわいいいきものは。
















































「・・・あのさ、もしかしてさ」

「・・・」

「俺に会えなくて、寂しかったりしたの?」

「・・・・」

「・・・う・・・わ・・・ぁ・・」






なんだこれ、恥ずかしい。

顔が熱くなってきた。




「シ・・ズ、ちゃん」




よしよし、と金髪を撫ぜてやる。

一つ一つが芯を持ってるそれは

自分の髪より少し硬いのに心地よい。


















「・・ノミ蟲」

「・・何?」

「・・・電話ぐらいしてこい」

「・・・はは・・っ・・わかったよ」


























そこには

争いをしてばっかりの二人の

誰もしらない優しい時間が流れてた。