無秩序 無統制 バラバラ 壊れて 崩れてく 崩壊のファンファーレ 万華鏡クルーズ 「好きだ」 あたしはキョトンとした。 チクリと心に何かが刺さったのは無視。 「知ってるよ。 あたしも日番谷君のこと好きだよ。」 「違う」 言わないでよ。 言っちゃ駄目よ。 チクチク痛む。 「愛してるんだ。お前の事。 ずっと一人の女としてしか見てねえ」 崩壊のファンファーレが聞こえる。 ラプンツェルは髪を切った。 シャングリラは煌めきを失った。 あたしは走り出した。 彼から逃げ出した。 彼は驚いて、舌打ちして、 あたしを追いかけてる。 キラキラしてるでしょ。 万華鏡の中に閉じ込められた飾りって。 でもね 万華鏡は中の飾りを鏡合わせにしてる。 終わりなき無限ループ。 だから綺麗なものは出てこない。 中にあるから美しい。 いざ無理矢理取り出したって大した飾りじゃないの。 この気持ちもそう。 ううん、寧ろ酷い。 叩き割って、中身を見たら、 きっと黒色して腐敗したような気持ちが溢れるわ。 きたないきたない。 彼には知られたくないの、こんなドロドロ。 それなら綺麗な万華鏡の中で永遠に鏡の中の海をさ迷いたいわ。 「待てよっ!!!!」 逃げまわってたのに捕まった。 捕まれた左腕から彼の拍動が伝わる。 唇からは忙しく二酸化炭素をはいて、酸素が侵入してる。 交感神経の興奮。興奮の伝導。 心筋の収縮。 動悸の発生。 ああ、鼓膜が享受する。 彼の荒げた吐息という崩壊のファンファーレ。 「なんで、逃げんだよっ!!」 「…」 「俺の事泣くほど嫌か」 「へっ…」 涙が溢れてた。 拒絶の涙じゃない。 普遍の崩壊が恐ろしいだけ。 本当はわかってる。 彼の気持ちも あたしのドロドロは彼を欲している。 この鏡の迷宮を叩き割って 彼を取り込んで 吸収して解け合って ああ、先に崩壊したのはあたしだったのに。 あいしてる、あいしてる あなたをあいしてる 心の叫びは鏡の無限に消えていく。 くるくる廻る、万華鏡。 「…桃」 「…悪かったな」 いやよ 「もう、変な事言わねぇし。な?」 ああ、矛盾してるね あたし 「今までのままでいいから」 「だから…」 無限の恒常性。 あたしはドロドロに負けた。 「いやだよ」 彼の碧緑があたしを見つめる。 「いかないで」 「桃」 「幼馴染みのまま、いれたらいいなって思ってた」 「そしたら傷付かないから、あたしもシロちゃんも」 「でも」 唇を噛み締めた彼に抱き締められた。 「すきだよ」 「もも」 「あいしてるの」 「ああ」 「もう幼馴染みじゃ満足できないの」 「…」 「シロちゃんの、彼女にしてください」 「…当たり前だろ、ばか」 「ばかって言った方がばか!」 緩む口元 筋肉の収縮 笑窪ができる ああ、こんなに簡単だったのに 終わってしまえば破壊行為も あっけない 叩き割って出てきたドロドロは 空気に当てたら 変色した。 キラキラした桃色に。 綺麗だよ これからは二人でさ迷いたいよ 無限の世界を 煌めく世界を けっして一日たりとも同じでない未来を いとしいあなたと