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きみのためににぎる剣だから 凛として咲く華の如く それは夏の熱い午後の事だった。 藍染に書類を渡しにいこうと五番隊舎へ赴いた。 照りつける太陽と蝉の泣き声。 訓練場の前を通れば、訓練の声。 野太い男の声に混ざって、少し高い女の声がする。 ふと扉を開けて中を見た。 熱い室内で、汗を流しながら剣をふる女。 自分より大柄な男を相手に押している。 それはそうだ。 五の文字を持つ副官章は伊達じゃない。 斬撃の音、 煌めく刃。 彼女は力はないが、 俺と同じように その軽い身体を動かして、 刃の先を跳ね返す。 「やぁっ!!!」 威勢のいい声と共に 相手の男の剣が払われ、 男が尻もちをついた。 同時に飛梅の刃が男の首筋に むかい、止まる。 「・・・負けました」 男の敗北宣言と共に 彼女はにっこり微笑んで、 男の手をとった。 男はその手をとって立ち上がり、握手をする。 「お疲れ様。相手してくれて、ありがとう」 「いいえ・・そんな、こちらこそ有難う御座います。雛森副隊長」 「ううん・・貴方もすごく強くなってるよ!  えっと・・そう、もう少し踏み出す時の足を前に出した方がいいかな・・?」 「わかりました」 「うん。それじゃあ、皆今日はお開き!休憩したら業務に戻って。  あ、ちゃんと水分取ってね!」 その言葉と同時に笑いながら隊員達が扉へ向かう。 俺は思いだしたように、藍染のところへ向かった。 ノックを二回。 「どうぞ」 「入るぞ」 「ああ、日番谷君か」 「先日の件の書類だ」 「ああ、ありがとう」 「じゃあな」 藍染にそれを手渡して、早々と退室しようとした。 「日番谷君」 振り返る。 「なんだ」 「訓練、見ていたのかい?」 「・・・見てたのか?」 「たまたま訓練場を見てる君が見えたんでね。  どうだった?雛森君の腕前は」 俺は苦笑した。 「全然だな」 「辛口だね」 「相手に踏み出しが甘いって言ってるが、  俺から言わしたらアイツも同じだ」 「はは・・そうかな・・・?」 「・・・・でも」 「・・・?」 「昔に比べたら、随分強くなった」 「自分の身くらいは守れるくらいには」 それだけ言って退室した。 藍染の執務室の窓にあった風鈴がちりんと鳴ったのが聞こえた。 隊舎に戻る途中。 「あれ!!?日番谷君!?」 井戸で手ぬぐいを濡らして、 汗を拭いていた雛森が俺に気づく。 「来てたんだ」 「おう」 適当に返事をしながら近づく。 「見たぞ」 「へ?」 「お前も踏み出し、甘いぞ」 そう言った瞬間に雛森は恥ずかしそうに頬を染めた。 「や・・やっぱり?」 「まぁ、相手の男よりはマシだったけど」 「はぁ・・・もっと訓練しなきゃ・・・」 手ぬぐいをきゅっと握って、俯く。 「でも」 「・・・・?」 「強くなったと思う。俺は」 そういえば、花開いたようにぱっと顔を上げて 笑った。 「ほんと!!?」 「・・・ああ」 「よかった・・」 そのまま二人で縁側に腰かけた。 雛森は水筒から水を飲んでいる。 その横顔を盗み見た。 何も変わらない。 いつもの雛森だ。 けれども、さっきは違った。 凛とした表情で剣をふり、 舞のようにひらりとかわす。 漆黒の瞳が相手の刃を見据え、 飛び散る汗が輝いていた。 かっこいいと言えば語弊があるだろう。 そう・・・ 綺麗だった。 気高い何かのように見えた。 知らない女みたいに見えた。 けれどもいつも思う。 コイツが強くなればなるほど 俺のここにいる意味はなんなんだろうって。 最初は雛森を守りたい思いから入った。 今はもう一隊を率いる人間だからそんな思いだけじゃないけれど。 それでも それでも やはり根本にあるのはその思いだ。 でも雛森はもう強い。 俺が守らなくてもいいくらいに。 当たり前だ。 こいつは努力をして、血が滲むくらい努力して 副隊長まで上りつめたんだから。 「日番谷君?」 「え・・あ、ああ・・・なんだ」 「ぼーっとしちゃって・・どうしたの?  あ、悩み!?わかった、あたしが聞いてあげる」 「雛森に相談する悩みなんてねぇよ」 「えー・・酷い」 じりじり照りつける太陽。 蝉の鳴く声。 隊舎の隅でゆれるひまわり。 「夏だね・・」 「ああ」 「かき氷食べたいね・・練乳かけて」 「小豆と白玉だろ・・?」 「おいしそう!」 嬉しそうに笑って。 その姿に少しどきりとする。 「・・・涎出てるぞ」 「嘘!?」 「・・・・嘘」 「も・・日番谷君!!」 少し怒る姿に頬が緩む。 悩みなんて お前のその顔見たら無くなるだなんて 言うわけないけれど 「なぁ・・雛森」 「・・・へ・・、日番谷くん・・・?」 ふと手に触れた。 ゆっくり指を絡めれば、 頬を朱に染めて、絡めてくる。 「お前がさ、もっと強くなっても」 「俺がお前のこと守っても・・・・いいか?」 なんだか恥ずかしくなって視線をそらした。 何を言ってるんだ、俺。 バカみたいだ。 顔まで熱くなってくる。 「・・・・うん・・・守ってね」 「あたしだけ・・・」 ふわりと雛森が俺の肩にもたれた。 彼女の匂いと、甘い甘い花の匂いがした。 どこか気高くそれでも優しい匂いだった。