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ただ、掌にこびり付いたアイツの血は 赤くて生温かくて 生が死に変わる瞬間を触覚で感じた気がした。 シガレット・フォーエヴァー 薬品臭漂う廊下で彼は白い天井を見つめた。 それはあまりに冷たい気がした。 そう、その温度は。 触れてしまえば、きっと先程触れた師であり上司であったあの男の亡骸と同じように思うだろう。 彼はそんな事を思った。 彼がくわえている煙草は彼が味わった最後の紫煙の味がした。 死の味ではなかった。 ただ、苦味が舌を転がり落ちた。 彼はこのような物が嫌いではなかった。 むしろ好きな部類かもしれない。 乾いた唇からは白煙しか漏れない。 ふいに、彼の座っている腰掛けの向かいにあるドアが開いた。 勿論その部屋の名前は霊安室で。 出てきたのは、最も親しい仲間の一人。 泣きじゃくりながら出てきた。 いつもは気の強いプライドの高い女が泣いていた。 ちなみにもう一人は、別任務中だったため、まだ連絡がとれていない。 彼女は煙草をくわえた彼の隣に座り、涙をゴシゴシと拭いた。 静まりかえった病院の廊下の椅子に二人は一言も喋らずに座っていた。 暫くして彼が口を開けた。 「悪かった」 彼女は驚いたようにを見つめた。 「俺の戦略が甘かった」 「そんな事ない。悪いのは殺した相手よ。  誰も悪くなんてない」 「お前も俺を責めねぇんだな。  いっそその方が楽なのによ」 「何言ってるのよ。アンタは悪くない。  ・・そんな事したらアタシが先生に怒られちゃうよ。  それより、これからどうするか。でしょ・・・?」 彼女は彼の手を強く握った。 恐ろしく冷えていた。 「これから…か」 「考えてるの?」 「…どう足掻いたって、奴らが俺達の敵で危害を加えるかもしれないことに変わりはねぇ」 「で?」 「…弔い合戦、……なんて、俺らしくねぇな」 彼女はその言葉に息を飲んだ。 そして、次の瞬間には綺麗な涙を一筋落として。 彼を見た。 「確かに、アンタらしくないけど・・・・一人で行く気じゃないでしょうね」 「・・・」 「馬鹿。アスマ先生が死んだのはアンタのせいじゃないって。  皆知ってる、分かってるから!!!  なんで、アンタが一人で行くのよ!!!」 「弔い合戦って言って、綱手様が許すと思うのかよ!!!?  第一、誰があんな危険な奴らがと一緒に闘って…」 「アタシ達がいるでしょ!!!!!」 彼は下げていた頭を上げ、視線が彼女のと一致した。 「アタシが、チョウジが、アンタの仲間でしょ!!!?」 「……いの」 涙がまた彼女の頬を濡らす。 外に降る雷混じりの雨のように。 「アスマ先生は、アタシ達の先生だよ。  弔い合戦なら、アタシ達全員で行くべきでしょ?」 「・・・・」 「アンタは中忍で、アタシ達より上だけど」 「ずっと、アタシ達、仲間でしょ!!!!!?」 「……ッ」 「行こう、弔い合戦」 「死ぬかもしれねぇぞ」 「そんなの忍になった時から覚悟してる」 「チョウジがビビるかもしんねぇぞ」 「そしたら、アタシがチョウジの馬鹿を説得するから」 「…………わかった」 やんわりと彼女は微笑んで、彼の手を離した。 そして、ポツリと呟いた。 「ねぇ」 「なんだ」 「その煙草、アスマ先生が最期に吸ってたヤツ?」 「ああ」 「貸して」 「………まさか、吸うんじゃねぇんだろな」 「…この煙草の煙を吸って、死んでいったアスマ先生に誓うの。弔い合戦のこと」 「あの野郎がお前が吸ってるトコなんて見たらキレるぞ。 『女がこんな物吸う必要ない』って」 「それはアンタの意見でしょ?」 「……ともかく、やめとけ」 「………じゃあ、直接じゃなかったらいい?」 「は?」 「思いきり、吸って」 彼は煙草の煙を言われた通り吸い込んだ。 苦い苦い。 気管が焼けるように熱い。 そして、頃合いを見計らって。 「さよなら、アスマ先生」 「!!!!?」 彼の口内から彼女の気管へ。 紫煙は移動を始める。 彼の唇から漏れる煙を彼女が吸い込む。 始めは顔をしかめていたが、次第になれたのか。 いや、やっぱり辛いのだろうか。 眉間に皺がよっていた。 彼はゆっくり彼女の背に腕をまわした。 唇をこじ開けて、舌を絡めた。 彼女はビクリと震えて、舌を絡めた。 お互いの唇を数回重ねながら、唾液の水音が誰もいない廊下に響いた。 互いの舌に乗った苦味を舐め合うかのように。 互いの傷を舐めあうかのように。 『きっと、こんなとこアイツが見たら、呆れるかもな』 彼は三回目の口付けの時にそう感じた。 なぜならもう苦味は残り少ない。 彼女の髪の甘い香りが勝ち始めているから。 だけど、この苦味は消えてくれない。 心に染み付いて離れてはくれないだろうから。 さよなら。 アンタの調子付いたダンディズムは嫌いじゃなかったぜ。 だけど、俺達はもう血で血を洗う方法しか知らない。 アンタはこの狂った行動を叱咤するだろうか。 いいや。 きっと傍観するだけなんだろうけど。 さよなら、シガレット Forever you will be living into me.