「なんか、腹立つ」 「・・・あの。俺、何かしましたか?」 『妄想スモーカー』 人の部屋に勝手に不法侵入したあげく、 たまの休みの駄眠を貪っていた俺を叩き起こし、 人のベッドで転がって、第一声がこれですか? 俺が何したっていうんだ。 理不尽にも程があるぞ。 俺は右手人差し指と中指の間に挟んだ煙草を口元に寄せた。 依存性物質と発癌性物質が俺の肺に侵入。 と同時に口からは紫煙。 彼女は何か恨めしそうに俺を見てた。 あぁ、そういうことか。 「煙草か。悪かったな」 煙草が嫌だったのかと思い、テーブルから灰皿をたぐりよせると。 「違うよ。吸ってて」 「は?」 「いーから」 彼女は手持ち無沙汰なのか俺の枕を抱き締めて座る。 ベッドの上に。 ちょっとキュンときた。 うん、下半身が。 ・・・下世話で申し訳ないが、思春期なんっすよ。 しかもそのポーズが先日キバの家に行った時、 無理矢理見せられたAVを彷彿と思い出させた。 何せ冒頭でAV女優が目の前の変な女と 同じポーズでベッドでスタンバイしてるわけだ。 わざとらしい演技にはヘドが出たけど。 ・・・ムラムラしなかったっつーのは嘘になるが。 「ねぇ」 現実に帰ってきた。 「あ?」 「あんた、この数年でかわったね」 「…いきなりどうした?」 「なんとなく、ね」 まぁ確かに。 と、俺はボンヤリ天井を見つめた。 同期ん中で一番に中忍になり、今じゃ、中忍の中でも上層。 給料もそこそこだが、命がけの任務もしばしば。 「特に」 「先生が死んでから」 俺はあいつを見た。 更に枕をきつく抱き締めていた。 「かわらないヤツなんていねぇよ」 「ドラマのワンシーンみたいな常套句ね」 俺達の師が死んで三年がたった。 まぁ、俺はこうやってアイツからヘヴィースモーカーを受け継いだ。 「かわらないで欲しかったのか?」 「そんな夢見る子供じゃないわよ。いくつだと思ってるのよ」 トゲトゲしい会話だな、おい。 あと、人の枕変形させるなよ。 抱き締めすぎな。 お前の匂いが付いたらどうすんだ。 あぁ、策略か。 俺を不眠症にしたいんだな。 サクラ的に言うと、こんな気持ちが『しゃんなろー』ってことか? 「・・・あんた、ホントにかわったね」 「例えば?」 「煙草とか、中忍とか、体つきとか・・・・・・・・・・恋する純情ボーイとか・・・」 「最後のなんですか」 いつ、何時俺が恋する純情ボーイになった!!? 確かに現在進行系で実を結ばない片想いは進行してますけど。 あと、そんな純情でもないし、こんな老け顔のボーイもキモいぞ。 俺の心の叫びを知ってか、あいつはニヤリと笑いやがった。 「テマリさん、でしょ?」 見当違いにもほどがあんぞ、幼馴染みよ。 「はぁ?」 「照れちゃって。ネタは上がってるんだからね」 「?」 「修行つけてもらったり、一緒にご飯食べたり」 「・・・はぁ、くだらね」 「ちょっと、何ですってー!!!!!」 くだらない話を真面目に聞いたせいで煙草が短くなっちまったじゃねーか。 それを灰皿に押し付け火を消すと、出された緑茶を飲んだ。 「付き合ってんでしょ」 「付き合ってません」 「嘘」 「修行は真剣につけてほしかっただけ。 食事はテマリが『和食のいい店知らないか?』っつたから、連れてっただけ」 「えー、つまんない」 「つまんなくて結構」 本当に好きな女は、枕に匂いが付くだけで眠れなくなんだよ。 つまんねー話でも座ってきいてんだよ。・・・朝から叩き起こされても、な。 「つーか、枕離せ」 「嫌」 「離してください」 「嫌よ」 仕方がないので俺もベッドに座る。 「いいじゃない、枕くらい」 「よくねぇ。俺の安眠の一大事だ」 「枕の形変わるぐらいで眠れないくらいデリケートだったの。 知らなかったわ」 どこでも寝る俺がそんなわけねぇだろーが。 「じゃあ、条件」 ・・・・なんだよ」 「あんたの好きな人、教えて」 「はぁ?」 「そしたら枕離す」 なんだ、その究極的な選択は。 安眠を取って関係を破壊するか、安眠を捨て関係を保つか。 「チョウジとかは好きな人とか教えてくれるけど、あんた秘密主義じゃない。 たまには教えて。応援するから」 俺と自分の恋愛をですか? 「・・・・」 ・・・・取りあえず一服しよう。 んで、考えろ。 IQ200らしい頭よ、働け。 栄養は酸素ではなくニコチンだがな。 「はーやーくー」 「今考えててんだよ」 「何をー?好きな人の事ー?」 「おー、考えてる考えてる」 考えてますとも。 「考えてる間に、その水玉何とかしろ」 「へっ?」 俺の左脳が弾き出したのは話をそらせと言う結果。 ちなみに右脳は水玉。 「・・・水玉・・・?・・キャ―――――ッッ!!!!!バカバカ!!」 やっと気づいたか。 スカートから見えてますからね。 俺は笑いながら、また煙草を口元に寄せた。 いのは完全に顔が真っ赤で・・・。 さっきより更に枕を抱き締めてしまってる。 ・・逆効果か、はぁ。 でも、可愛いから許す。 俺キモい。 「こうなったらあんたにも恥ずかしい思いさせてやる!」 「は?」 「告白してきてよ、好きな子に!!!!」 「絶対やだ」 「じゃぁ、あんたの安眠はどうなるか分かってんでしょうね!!」 はぁ、可哀想な枕め。後でオカズ決定だ。 御馳走様。 「・・・分かったわよ。いつからその子の事好きになったの?」 「・・・いつか忘れた」 嘘だ。 いのは負けじと質問する。 「じゃあ、どんな子!!??」 あー、なんかもーめんどくせー。 「俺と真反対タイプ」 「なにそれ!!その子、可愛い!!?」 「可愛い可愛い」 「シカマル…変な物でも食べた?」 「いいえ」 可愛いって言わないとアッパー食らわせてくる子なんですよ。 身に覚えは? 「じゃあねー、その子が今あんたの隣にいるとして、何をする? あ、変な妄想は駄目よ!!」 そんな質問すんなよ。 仮定じゃねーし、現実だし。 めんどくせー。 なんかもういいや、いろいろ。 片想いも潮時かもな。 「・・そいつ、やたらいい匂いすんだよ」 「うん、好きな子の匂いとかドキドキして眠れなくなっちゃうよね!!」 わかってんじゃん、早く返せよ。 「隣って事はベッドにいるわけだよな?」 「そーよ、あたしみたいに座ってるとして」 「パンツ見せながら?」 「もう見えてません!!馬鹿、キモイ、変態!!!!」 見せながらなら先日見たAVと同じになりますよ、続き。 あ、変な妄想はアウトでしたっけ? 「匂いがさ、つくんだよ」 「うん!」 「枕、没収」 と、枕を取り上げようとしたのだが。 「駄目よ!!まだ終わってないじゃない!!!」 「いや、終わりましたけど」 「匂いがつくから、どうすんのよ!!自己完結禁止」 この人完全に誤解してるよ。 目キラキラさせてさ。 まだ気付かねぇの? つーか告白ですよね、ある意味。 「だーかーらー」 「うん」 「早く枕を離してくれませんかね。山中さん。 純情ボーイなんで夜も眠れなくなるんで」 「あんた、しつこいわね。あんたが続きを・・・・ん? ・・・・え、ちょ、・・・・・ええぇ!!!!??」 一気に顔が赤くなる。 「なぁ、いの」 「えっ、な、」 深い溜め息が漏れた。 「お前、もっと読解力つけろよ。本を読め、漫画以外で」 「う、煩いわよ!!!!!」 ニヤリの立場逆転。 もう、いいや。つーか枕更に抱き締めて・・・返す気ねぇな。 なんか顔赤くなってきた。 ああ、クソ。 コイツが赤いからだ。 うん、そうだ。 「・・・それってさ、」 「・・・おぉ」 「あたしがすきってこと?」 上目使いは右ストレートと同威力。 知ってました? 悔しいので、頬摘まんで左右に伸ばしてみる。 柔らかっ。 「ふぁーにふんのふぉー!!!」 「この口がくだらねーこと言うからだろ」 「ふぁんふぇふっふぇー!!」 「・・・こんな恥ずかしい事二回も言えるか、バカ」 「・・・・・・」 摘まんだ頬がまた熱を帯びていく。 ただ一つ言えるとしたら、もう好きなんかじゃない。 好きだったのはアイツが死ぬまで。 アイツが死んだ時、この胸で泣きじゃくったコイツを見た時、好きじゃなくなった。 今までの『守らないと』と言う気持ちが『俺が守らないと』に変わった。 この気持ちはそんな言葉じゃあらわせきれないから。 多分こんな気持ちを人は『愛してる』と表現するのだろうが。 ・・・俺が言えるか! ニコチン依存の純情ボーイは割に合わないです。 灰が落ちそうだったので指を離して、灰皿に煙草を近づけ灰を落とす。 つもりだったが、なんだか煙草を吸える雰囲気でもないので、そのまま灰皿に置いた。 えー、なんか不思議な状況。 至近距離で向かう合って、互いに赤面で顔を見合わせない。 喋らない、喋れない。 ここはあれですか、噂のカードをきるんですか? 『冗談と言って誤魔化す』 『素直に告白してみる』 『抱き締めてキスしたい』 ・・・最後願望だろ、おい。 どーする、俺どーする。 ちなみに比率は1:7:9。 「いの」 肩がビクリと震えて、真っ赤な顔が上目使いで俺を見た。 ・・可愛いな・・・って俺はSか? まぁ・・どっちかっていうとMより・・・ って・・・え、ちょっ、ええ!!!! 「な、なんで泣いてんだよ!!」 「泣いてない!!」 またうつ向いてしまう。 えぇ、この瞬間0:0:17。 俺は悪くない、お前が悪い。 涙を拭う手首を握った。 「・・・シカマル?」 引っ張ると見事腕の中に収まり、俺の胡座の上に座る形となった。 何か言おうと真っ赤で口をパクパクさせてるが言い出す前に言った。 「ちょっとだけ、こーさせろ」 さよなら、幼馴染み。 初めまして、ギクシャクした関係? そう思うとよりきつく抱き締めていた。 少しだけでも長くそうしてたかった。 「すきだ」 愛してるなんて言えないから、それより下の言葉にそれ以上の意味を込めて。 ・・・甘い匂いがした。 店の匂いかシャンプーの匂いかは知らないが、 蜂蜜みたいな色の髪に甘い甘い花の匂いがした。 彼女は開口、雰囲気をぶち壊してくれた。 「…煙草臭い」 「すいません」 罪悪感にかられて腕を解こうとしたのに、次の瞬間またきつく抱いていた。 「でも、あんたの匂い、すき」 「・・・どうも」 そう言って腕の中の小動物は枕を少し見た。 ・・・あのもしかして枕拉致はそういう意味ですか? 俺の匂いがするからとかですか? ならもう容赦しませんよ? 「あんたも」 俺を見つめる顔は真っ赤で。 でも、またすぐに肩に顔を押し付けてしまった。 ・・・あの、今すきって言いました? 幻聴とかじゃないですよね? ってなんで敬語。 「やっぱり、かわらないで」 「あ」 「その気持ちは」 「・・・」 「あんたの事諦めて、テマリさんと幸せになれるよう応援するつもりだったのに・・・」 「・・・泣いてた理由はそれか?」 「わかんない。でも泣いてた。なんかホッとしたのかな」 「妬いてたのか」 「・・・・うっさい」 恥ずかしそうに目線を反らすな。 そんな事きいて歯止めがきくか、バカ。 「ねぇ」 「・・・おう」 「ちょっとじゃなくて」 「もっとこうしてて」 「やだ」 「へ?」 「俺がこうしてるから、人質解放してくれませんか? つーか、邪魔だろ」 最初は何を言ってるかわからなかくて怪訝そうな顔をしたが、 すぐに枕の事と分かり、緩めた腕の間から人質は解放された。 「・・・なあ」 「うん」 「前言撤回」 「はっ!!!?」 驚いて、真っ赤な顔で、ウサギ目で暴言吐こうとした口を塞いだ。 だから、言ったろ? 『お前が悪い』って。 唇柔らけー。 調子にのって舌を入れてみた。 コイツさっきチョコ食ってたな・・。 甘っ。 でもなんだかんだで舌を絡ませてきた。 目をしっかり瞑って。 頬真っ赤に染めて。 純情だなー、と思った。 煙草吸って、 仕事で手汚して、 やらしーこと考えまくりの俺にはもったいないかなっと。 馬鹿みたいで、すんません。 でも片思い長かったんで。 これくらいののろけは許してください。 「・・・苦い」 「どーも」 恥ずかしそうに腕が首の後ろにまわった。 顔は肩埋められてるけど。 ・・・可愛すぎると、調子狂うな。 うん、冗談でも入れてみるか? 「いの」 「・・・うん」 「水玉もいいけど、黒のレースもいいと思う」 御花畑が見えました。 彼女の首絞めから俺のギブまで時間はかからなかった。 ただ。 「・・・考えとく」 と呟いたいのは やっぱり純情ガールだろう。 まぁ、すぐに俺色に染めますけど。