(現パラ。  神楽・沖田高3、にーに大4、あぶ教授。  にーにがド・シスコン) 「は?」 思わず殺気丸出しにしてしまった。 三つ巴攻防戦 「兄ちゃん!私の分のご飯食べたアルか!?」 「何言ってるんだい、神楽。  兄ちゃんは常に朝食はご飯派だって何度も言ったろ?  お前も食べるならお前と俺の食べる分を足して  昨日の夜炊いておけよ」 「炊いておいたアル!兄ちゃん食べ過ぎアル!  馬鹿!!」 神楽はドタバタと二階から降りてきて 開口、そう怒鳴りつくした。 ひらりとセーラーのスカートが舞う。 ふわりとシトラスのヘアコロンの匂い。 最近の神楽はどうもおかしい。 あの馬鹿丸出しの伊達眼鏡もかけなくなったし、 髪型もあのカパカパ(髪飾り)着用ヘアではなく 今日は可愛らしいピンで髪を止め、 シュシュで横に一つに髪を纏めている。 スカートは綺麗にアイロンがかかってて皺ひとつない。 俺は一人用意した朝食を食べながら、 忙しく動き回る神楽を見ていた。 トースターに食パンを二枚入れて、 スイッチを入れる。 焼けたそれにバターと苺ジャムを付けて、かじる。 だが、ちらちらとあいつが見るのは いつもテレビの朝の占いのくせに 今日は鏡。 とうとうBGMは占いコーナーに突入。 結野アナのブラック占いのコーナー。 『はい!今日の一位は、さそり座の貴方!』 「え!ホントアルか!?」 それを聞いた瞬間テレビに視線を向ける神楽。 『さそり座の貴方!今日は何をやっても絶好調!  特に恋愛運が過去最高!恋人と一層仲良くなれちゃったり  あんなこととかこんなこととかできると思います。  あれ?作文?』 「ふーん、よかったね。かぐ・・・」 振り向いて、パンをかじる神楽を見つめれば 真っ赤になって、皿の上に食パンを落としていた。 「・・・・・・・・・何赤くなってんのさ」 つっこめば、はっとしたように 顔を振った。 「ななななななななんでもないね!兄貴も早く食べるヨロシ!」 「・・俺今日授業昼からなんだけど」 「そそそそそうアルか!じゃ、じゃじゃあ私は」 その時、空気を裂くように チャイムが一つ。 「・・ん?誰、こんな朝早くに・・」 立ちあがって、玄関へ出ようとすれば 「ああああ!そ、そよちゃんがお迎えにきたネ!  わ、私行ってくるアル!」 「・・え・・いつもはお前が迎えに行ってるんだろ?」 「きょ今日は違うネ!じゃあ行ってきます!」 「・・・・・・・・・」 どだばたと口の横に苺ジャムつけたまま 神楽は鞄を持って飛びだした。 「・・・?・・・・・・・・・」 行動が不審すぎる妹を不審に思っていれば。 「あ」 台所に置かれた、ピンクの巾着袋。 あの馬鹿、弁当忘れてる。 巾着を掴んで、 玄関の扉を開けた。 「神楽、弁当忘れて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 誰が予想できただろう。 まさか妹が玄関前で 口の横についた苺ジャムを 見知らぬ男に舐めとられてるとこなんて。 「あ」 「に、兄ちゃん!な、何アルか!」 「・・誰ソイツ」 「あ、おはようございまさァ。  俺、妹さんの彼氏の沖田って言いまさァ」 「ちょ、お、お前も何、真面目に挨拶してるアルか!」 「だって俺達付き合ってるだろィ?」 「そ、そ、そうだけど・・・っ」 真っ赤になって頬を押さえる妹を見た瞬間。 「ちょっとさぁ、沖田君だっけ?」 「なんですかねィ?」 ああ、俺忘れた。 こういうところもあのハゲに遺伝してたって。 「朝っぱらから人の可愛い可愛い可愛い妹に手出すなんていい根性してるよね?  何?死にたい?死にたいんだ?そうなんだー!へぇ!  殺してあげようか!」 拳を鳴らした瞬間。 「兄ちゃん!何言ってるアルか!  沖田、こんなシスコンほっぽってさっさと学校行くアル!  じゃあな!シスコン!学校行く時は閉じまり忘れんなよ!」 そう言って神楽は沖田とかいう男の自転車に 二ケツして学校へ向かっていった。 俺にはただただ敗北感と 妹にシスコン呼ばわりされた屈辱が ふつふつと沸いていた。 「ねぇねぇ、阿伏兎ー。顔貸してよ」 「阿伏兎先生って言え、このすっとこどっこいが」 「何?お前まで俺に口応えすんの?」 「何苛々してんだ、馬鹿」 「・・・朝から妹と妹の彼氏がいちゃついてるのを見せつけられたんだよ!  あのチャラ男・・・!俺の可愛い神楽に手出したんだよ!  殺したい、ああ、ミンチにしたい、あ、今夜の夕食ハンバーグにしようかな」 「あのなぁ。そういう話は人の上からどいてから話せっつーの」 阿伏兎教授の研究室の黒ソファは今日も重さに耐えきれずに鳴いている。