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その肉塊は頭蓋が陥没する音を聞けたのか。 ガゼル 「っ!」 勢いよく肉まんにむしゃぶりつけば 同時に舌を噛んだ。 肉汁と、柔らかな生地と、鮮血の味。 享楽的だなぁとガラにもないことをおもいながら 何とも言えないそれを咀嚼する。 口に含んだ肉塊も ミンチにされて玉ねぎと混じり合うまでは きっとこの鮮血を知っていたのだろう。 そう思うと可哀想だと思った。 死んだことが? 否。 この甘美な味を知らず、死んだことが。 哀れだと思う。 弱いものはこの甘美な味を知らずに死んでいくのだ。 噫下した。 喉仏が上下する。 ふと、指先が“あれ”を求めた。 それは主を無視して、“あれ”を探す。 捕まえる、絡め取る。 それは指先の咀嚼行為。 「あ?」 同じく肉まんを一つ食べ終えた彼の舌を摘まんだ。 訝しげというか、不満そうな視線が射抜く。 ああ、すき、すき、 すき、ころしたい、すき、ころしたい、すき、ころしたい。 鮮血滴る舌先で摘まんだそれなぞった。 彼は知ってる。 肉塊が知らなかった甘美な味を。 僕ら肉食動物しか知らない、罪の味を。 禁断の果実を。 武骨な指先が、脇腹を撫ぜた。 俺はくすくすと笑った。 ただただ、果実の汁を二人で舐めることに必死だったのだ。 ただただ、彼の味も知りたかったのだ。 「っつ!!?ってコラ!」 舌先に自分のと違う味を感じた瞬間怒られた。 「なんだよー」 「何すんだ、このスットコドッコイ」 「舌噛んだくらいでブチブチ言うなって」 「いや、可愛く甘噛みとかだったら許すけど  噛みちぎるぐらいのテンションで噛んでるからね」 「そっか、ごめんね、阿伏兎。痛かったね、よしよし」 「棒読みするくらいだったら言うな」 くしゃくしゃの髪を撫ぜる。 更にくしゃくしゃになる。 「だってね、大好きなんだよ、阿伏兎のこと」 「アンタが生粋のドSってのはわかったから」 「はは、阿伏兎だってSだろ」 上唇を食めば、緋色の唇に舐められた。 楽園追放の味。 邪魔なんだ、邪魔。 身を包む、繊維が。 熱が、熱が、熱が。 侵食できない指先なんて 侵食できない指先なんて イラナイ 「団ちょ・・・っ・・」 いつかテレビで見たガゼルは 草原を走っていた。 たったひとりで たったひとりで 君はこの味を知ってたんだろう きっと誰も共有してくれない事も 知ってたんだろう 孤独なんて、おいしいじゃないか。 少なくとも果実の味を知らない、肉汁の滴る肉まんよりも、 ずっとずっと。 「っあ・・!んやぁっ・・・」 でも、どうして俺は お前の侵蝕だけは許してしまうんだろうか。 「あ、あ、あっ!」 ガゼルは動脈を噛み切った。 世界が揺れる、消える、崩れてく。 それでもそれでも それでも この感情の名前は「愛」であってたはずなんだ。