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たまらなく



















































君に触れたい




















































手首を掴んだ。


それは真白。

それは細い。


彼女は瞳をまんまるくして

俺を見てる。


空の色よりも深くて

海の色よりも優しい色が


まるくまるく

そうだ、地球もこんな色してるんだっけ

いつかニュースで見た地球を思い出した。



何か言葉を紡ごうとしてる唇は

思った以上にぷくりと膨らんでた。

これだけ綺麗に胸も膨らめばいいのに。

きっとそんな心の内を聞かれたら

ぶっ飛ばされると思いながら。



彼女はきっと眉根を寄せて

掴んでいない方の拳を俺に向ける。

パンと音が鳴る。

俺の掌に拳が収まる。

彼女は驚いたような顔をして。

俺はただその弱まった拳が付いた手首を

反対側と同じように握って、

下ろした。



彼女は怒りを露わにしたような顔から

複雑そうな顔をして俺を見つめた。

俺も知らない。

俺も彼女のそんな顔は知らない。



俺はただただ彼女の顔を見てた。

いつものように馬鹿にした顔をするわけでもなく。

本当はこの胸の高鳴りを押さえたくて仕方がなくて。

でも、俺はその方法を知らなかったのだ。






カラスが鳴いてた。

ブランコはキィーと揺れて鈍い音を立てた。

子供達は返った。

彼女も帰ろうとしてたところで

俺はその手首を握ってしまった。



どこかの家から温かな夕食の匂いがする。

俺も帰らなきゃ、彼女も帰らなきゃ。

わかってる、わかってる。




でも今更掴んだ手首のいい理由なんて思いつけはしない。

思いは喉まで押し寄せて。

でも唇から吐き出てはくれない。




毎夜襲われる苦しい感情が胸を押していた。

苦しい 苦しい 苦しい

知りたくなかった 知らなくていいって 思ってたのに。





最初は嘘だって思ってた。

こんなガキをそういう対象に見るなんてありえないって。

幻覚だって。

でも気づいたら、そんなこと言ってられなくなった。



毎夜、夢で笑ってる。

毎夜、夢で俺の名前を呼んでる。

手を握る。笑顔で。

見せてくれない、笑顔で。




いつもは喧嘩して、喧嘩して

殴られたり殴り返したり

そんなことを繰り返してたのに。




気づいたら殴り返せなくなった。

逃げるばかりになった。

彼女は馬鹿にしてきたが、それは無視することにした。





指先が俺の頬を摘まんで「馬鹿面!」とののしれば、

口では「うるせぇ」といいつつも

指先の温度にとくりと胸が鳴る。


風で桃色の髪が揺れれば

それに指先が触れてる。

怪訝そうな顔で見られれば「ゴミ付いてるぜィ」と誤魔化す。






知らない 知りたくなかった



その度に苦しさが湧く。

こんな感情知りたくなかった。





でも



もう戻れない。

この感情の名前を知ってしまったから。















彼女は怒った。

さっき、帰ろうとした時に。





何故、最近喧嘩をしないのか。

お前といても張り合いがない。

ドSじゃなくなったのかMになったのか。

お前なんてもう知らない。





そんなことを言って、走り去ろうとした。

なんだかとても泣きそうな顔に見えた。





俺は、堪え切れずに手首を掴んだのだ。

さっきのように。

そして一つ殴って、それを止め、手首を掴んだ俺を

複雑そうな瞳で見てるのだ。



















































嫌いアルか?



















































呟いた一言にもっと驚いた。

でも彼女の表情に更に困惑した。

涙がぼろぼろ零れていた。












嫌いアルか?

嫌いならそう言えばいいアル

喧嘩もしたくないって言えばいいネ

会いたくないって言えばいいネ




そんなこと思ってねぇよ





じゃあ私のこと、そんな辛そうな顔で見ないでヨ












何も言えなくなった。立ちすくんだ。

ただ白い手首を握っていた。








今のお前なんて大嫌いアル

意味わかんないアル








俺は彼女を掴んでた両手首を離した。

彼女は涙をその手首でごしごしと拭いて

俺を顔を見た。

キッと睨んではいたが

その涙に濡れた瞳が悲しげだった。





ささった。ぐざりと何かが。






そして、やっと気づいたんだ。

俺が触れたかったもの。






唇でもない。

髪でもない。

指先でもない。

胸でもない。








ああ、やっと俺はわかったから。







彼女は振り返って、走り去ろうとした。









俺は触れたかったものを

やっと腕の中に入れた。


























小さな背中を腕の中に





彼女の体全てを抱きしめた。







































頭にこつりと顎をのせれば

シャンプーの匂いがした。

フローラルとかきっとそんなの。

きっと安物だろうとか思いつつも

どこかの高級な香水のような匂いに

思えるのが不思議でたまらない。






ぎゅううと苦しいくらい抱きしめる。

もう一度、存在を確かめるかのように。





その耳は髪よりも赤く染まってる。

頬も。

ひとつ、震える。










震えてるのはお互い様。









カッコ悪い。

俺だって喉から声が出ない。

もう喉を越えた言葉が口の中でもごもごしてる。

唇が震えてる。












「嫌いなのになんでこんなことするアルか。

 離せヨ。私はお前のことなんて」












知ってる、嫌いなんだろ。

いいって、もういいんだって。

嫌われてるのは知ってんだよ。

だけど、俺はもう口まで来てんだよ。

もう吐き出すしかねぇんだよ。

















耳の後ろに唇を寄せた。

下唇が少し触れた。

もしかしたら震えが伝わったかもしれない。














もういい。

キモいとか思われてもいい。

マジウザいとか言われてもいい。

変態と罵られてもいい。

ドMにチェンジしたんじゃね?とか言われてもいい。








俺はもう


















































「すき・・・・・なんでさァ」



















































君に触れてる



















































震えた身体をもう一度抱き締めた。

本気で嫌がった勿論離すつもりで。

でもそんな素振りは見せない。










「・・・喧嘩したくねぇのは傷つけたくないからでさァ」

「・・私、夜兎アル」

「すぐ治るってわかってても嫌なもんは嫌でさァ」







「大食いだし、汚いし、馬鹿だけど」



















こうやって触れていたいんでさァ


















すきだから

たいせつにしたいから














「こういう気持ち持ってる俺は嫌いですかィ」
















きっと聞かれてる

超高速の心臓の音も

でも言いたい

たった三文字だけど

君の



























「かぐ・・ら・・」























名前。



































腕の中で彼女の体がまわった。

俯いたまま俺の胸に顔を埋めた。





「ばっかじゃねーの、お前。

心臓バクバク言ってるネ」





鼓動の早さを馬鹿にする。

いいんだ、知ってたから。

コイツの気持ちは・・だから、早く


この鼓動を終わらせて。
























「でも」




















ぎゅうと服を掴まれた。




























「・・私も・・バクバクしてるから・・

 馬鹿・・アルか?」
























泣きはらした地球色の瞳が

俺を見つめた。

世界で一番かわいいとか

そんなことを思ってる時点で脳みそ終わってるかもしれないなぁ。

頭のどこかでそう思ったけど仕方がない。

コイツに惚れてるから。










もう無理













嗚呼、また触れたい

触れたくてたまらない







顔をゆっくりと彼女の顔に寄せた。

夕日が少し眩しい。

彼女はゆっくりと瞳を閉じて

唇を動かした。



















「そ・・うご・・・」































嗚呼、何度君に触れても満たされないのに。

それでもそれでも



















































君に触れたい。