お前は俺のもの。 肉も骨も精子さえも。 侵食受精 「アンタは」 俺の耳につく、声。 「俺を犯したいのか?」 Yes Or No ? 俺の答えは決まってる。 ただただ、いつも通り 笑みと言ふ防壁を張る。 「いいや」 俺の下で鼻血を垂らし(きっと鼻の骨は折れてるんだろう) 口端を切り 左腕の義手を壊され 右肩を脱臼させられた男は はっ、と息を吐いた。 酷い怪我、酷い怪我。 お前はでもその姿が似合ってるよ。 お前は強いからこそ その姿が似合ってるよ。 その姿を晒すのはどうか俺の前だけであってよ。 「じゃあ、何、興奮してんだ」 呆れた視線は俺の股間を見つめてる。 熱で張り詰めたそこは解放を訴えてる。 ああ、きっとここで俺が腰を振れば 幾億の種が放たれ、本来の仕事をせずに 死んでいくんだろうね。 かさついた下唇を食む。 一度目は唇の間に挟んで 二度目は舌先でかさつきを潤すように 三度目は血が出るくらい歯を立てて。 俺を刻ませてよ。 俺を刻ませてよ。 お前しか俺を刻んでくれないから。 お前は俺を刻まなきゃ。 「阿伏兎」 「あ?」 「お前の血はいい味がするよ」 「・・そりゃどうも」 阿伏兎の上着を緩めた。 留め具を外して出てくる 厚い胸板はやっぱり男のものだ。 「・・・何してるんですかね」 そこに耳を当てれば、心臓の鼓動が聞こえた。 ああ、その音。 俺が一番不快な音。 「この音嫌いなんだよ」 「止めたいなぁ」 喉仏が上下した。 それに噛みついた。 「だん、ちょ?!」 ねぇ、阿伏兎。 お前なんて全部俺になってしまえばいいよ。 この鼓動も、血肉の味も、 全部全部俺の舌の上で転がされて 咀嚼されたらいいのに。 でも俺に反抗しないお前なんてつまらないんだよ。 なんて我儘な俺。 でもそうじゃなきゃ俺も俺じゃないんだよ。 俺達はいつまでも平行線を転がり続けるのさ。 阿伏兎、教えて。 ね、お前の眼球はどんな味がするの? お前の鼓膜は? お前の唇の肉は?舌は? お前の心臓はどんな匂い? お前の肝臓は?俺の大好きな鉄の匂い? 「あ、ぶ、と」 「今度無様な姿になったら、 俺がお前を全部食べてあげる。 お前の骨の前でお前の肉の味を全部教えてあげる」 「それがいやなら」 「わかってるだろ?」 「・・・・ああ」 眉をひそめながら肯定。 俺はそれだけでも十分。 血だらけの頭を膝に乗せて、 愛おしいものを抱き締めた。 血に濡れた唇を吸えば、 素敵な味。 揺れる揺れる揺れる 揺らす揺らす揺らす 俺はただただ名前を呼びながら 腰を振る。 阿伏兎の上で乱れに乱れる。 阿伏兎は下から何度も突き上げる。 キモチイイキモチイイキモチイイ 侵蝕して侵蝕して 俺を犯してよ俺を殺してよ お前の杭がこのまま俺の腹を貫いてしまえば お前はきっと俺の肉の味を知る事ができるよ。 その時は、お前の杭を代わりに俺に頂戴。 そのまま孕んでやるからさ。 絶頂に達して 白濁が阿伏兎の腹を濡らした。 心臓の近くまで飛び散ったそれを見て 阿伏兎の心臓と受精すればいいのにと 睡魔に襲われる頭の端で思った。 お前の心臓を食って 俺とお前の子供が生まれればいい。 それはきっと可愛いよ。 それはきっと兎だよ。 血にまみれた兎だよ。 ああ、俺はそいつを殺したい。