あれに似てる。



















































テレパシー



















































血飛沫が舞う戦場で、

最近気づいたことがある。

戦闘中、視線が合う。

団長と、視線が合う。


すると、わかってしまう自分がいる。



次に彼がどのように動くのか。


だから、その邪魔をしないように、動く。

アイツの近くに居ない敵を粉砕していく。

そして、アイツの後ろにいる敵の刃が

アイツに近づいた瞬間のみ

その首を飛ばす。



「あー!阿伏兎!

 俺、今の、気づいてたってば!」

「へいへい、すいませんねぇー」


軽口を叩きながらも、

手に握る傘は肉を刻む。








血潮を浴びる団長は、美しいと思う。








あの狂気に染まった瞳も

あの不気味な笑みを浮かべる表情も




腹の底から恐怖を感じるのに、

それは美しいのだ。














































「はぁー!疲れた」


迎えの船を待つ。

死体の山ができあがった戦場で

滾った熱を沈めていく。


団長は俺が手渡したボトルに入った水を飲んでる。



「ほい、阿伏兎、ありがと」

「おう」



投げられた、それを受け取って

俺も口にする。

喉を潤す感覚が心地よい。




「あ、間接チューだ」


「ブッ!!」




下らないつっこみに思わず噎せた。




「つまんねぇこと言ってんじゃねぇ」

「あははは〜ノリ悪いね、阿伏兎。

 おっさんだもんね」

「悪かったな、おっさんで」





口ではそう言ったが、

頭に浮かんだ言葉に一人ごと。




「・・・俺もまだまだ枯れてないってか・・」

「ん?」

「いや、何でもない」








間接じゃなくて直接がいいなんて、

どこのピュアな若造の発想だっての。










自分の考えを鼻で笑って、

鞄にボトルを戻していたら、

膝の上に重みがかかった。






「・・・団長?」






血に濡れた妖艶な笑みが

こちらを向いている。

赤い舌先がぺろりと唇を舐めた。









嗚呼、考えてることがばれたのか。

それともただただこいつが発情しただけなのか。









唇を舌先に寄せて、吸いつく。

何度も唇を重ねて、味わう。

唾液まで血の味がする気がした。









「・・はぁ・・っ」

「・・どうした?」

「阿伏兎が物欲しそうな顔してたから」

「・・・ばれてたか」

「ばれてるよ」







血の塊に濡れた髪を撫ぜてやる。

帰ったら、とりあえず風呂に入ろう。

コイツの髪についた血を洗い落とそう。

そして、風呂上りにビールでも飲んで、

その後、セックスでも何でもしたらいい。











「なぁ」

「ん?」

「俺、そんなに物欲しそうな顔してたのか?」

「んー、なんていうか、別にそんな露骨な顔じゃないけどさ。

 なんとなく雰囲気っていうか・・」

「・・・そうか」









最近こいつの考えてることがわかることがある。

きっとこいつも同じなんだろう。








「ねぇ、阿伏兎が今何考えてるか当ててあげよっか」

「・・・当ててみろよ」

「まずね、船に帰って、とりあえず血を洗い流したいなーって思ってる」

「・・当たってる」

「その後は、ビール。晩御飯つまみながらね」

「・・当たってる」

「で、御疲れの団長様にマッサージをしてあげようと思ってる」

「それはない」









「けちー」とか言いながら、

団長はけらけら笑ってる。

俺も当ててやることにした。








「アンタの考えてること当ててやろうか」

「うん」

「『晩飯はふりかけご飯とハンバーグが食べたい。

 味噌汁はわかめよりあさりのやつがいい』」

「凄い、なんでわかったの!」

「そんな顔してる」

「どんな顔だよー!」










何も言わずに血濡れた手を絡めた。

嗚呼、さっきまで命を奪っていた手が

こんなにも愛おしい。

狂ってるな、俺。



















































「団長」

「ん」

「帰ろう」

「そうだね」





手を繋いで、立ち上がる。

嗚呼、血の匂いを纏わせて、

二人だけの世界に、帰ろう。